リスクオンに火をつけた日米関税合意

2025/07/25

今週23日(水)の朝に飛び込んできた「日米の関税交渉で合意に至った」というニュースをきっかけに、株式市場の雰囲気が一変する展開になりました。

元々、先週末に投開票を迎えた国内参議院選挙で、与党が議席の過半数に届かない敗北を喫し、今後の政局の不透明感が強まるとともに、「日米関税交渉も難航するのでは」という見方が多かっただけに、意外にも早期のタイミングで合意に至ったことや、関税率が25%から15%に引き下げられたこと、そして、分野別の自動車関税についても同様に15%に引き下げられたことなどがサプライズとなった格好です。

これにより、この日の日経平均は前日比で1,300円を超える上昇を見せ、終値も41,171円となって、40,000円台はおろか、41,000円台を回復させて取引を終えています。また、日本株上昇の流れは海外にも伝播していきました。香港ハンセン指数は2021年以来の高値を更新したほか、米国株市場でも、NYダウが年初来高値を更新し、S&P500も最高値を更新、ナスダック総合は、21,000p台に乗せ、終値ベースの最高値を更新しています。

交渉の長期化が見込まれていた日本が15%という税率で着地できたことで、現在も交渉を続けているEUや中国も同様の展開になるのではという期待感につながったことも株高に拍車をかけたと思われます。

国内外の株式市場のリスクオンに火をつけた格好となったわけですが、翌24日(木)の日経平均もさらに値を伸ばす展開となっており、昨年7月11日の取引時間中につけた高値(42,426円)も視野に入ってきていますが、「株価がどこまで上昇できるのか?」、「今後も株価上昇の流れが続くのか?」が気になるところです。

確かに、想定されていたよりも低い税率となったことで安心感が広がり、売り方の買い戻しも巻き込んで株価が上昇していきましたが、関税によるコスト上昇などの影響がなくなったわけではありません。

少なくとも、税率が見えてきたことで国内企業も今後の業績についてある程度見通しを立てることができるようになると思われ、足元で本格化しつつある企業決算などで、「関税の影響を克服して業績を伸ばすことができるか」を確認していくことになります。関税への耐性が強い企業とそうでない企業とで株価の明暗が分かれていくことになりそうです。

また、半導体関連銘柄で構成される米SOX指数は23日(水)の取引で下落するなど、これまで相場を牽引してきた米国のテック株がこの株高の流れに乗り切れていない面があることも注意が必要かもしれません。これらのテック銘柄の多くは株価上昇に伴って割高感が意識されていたため、売りが出やすい状況となっていましたが、今回の日米関税合意による景気敏感株などへの物色の広がりがこうしたテック株売りを吸収したことが考えられます。

従って、足元の株価上昇が一服した後は、企業業績の見通しや米景況感の動向をにらみながら株価水準を探って行く展開へと移っていくと思われます。

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