米FOMCとトランプ次期政権

2024/12/20

12月相場の「最大のヤマ場」とされる、日米の金融政策イベントを迎えた今週の株式市場ですが、米FOMC(連邦公開市場委員会)を通過した18日(水)の米国株市場は、主要株価指数(NYダウ・S&P500・ナスダック)が揃って急落し、この流れを受けた19日(木)の日経平均も大幅下落でのスタートとなっています。

この原稿を書いている時点(19日午前)では、まだ日銀の金融政策決定会合の結果は公表されていませんが、米FOMCに対する初期反応は日米ともに下落する格好となりました。

もっとも、今回の米FOMCの結果自体については、「0.25%の利下げが実施される一方で、今後の利下げペースが鈍化するのでは?」という予想通りの展開だったのですが、米国株市場が思っていたよりもネガティブに反応した印象です。とりわけ、18日(水)のNYダウは前日比で1,000ドルを超える下げ幅を見せたほか、約50年ぶりの続落記録(10日間)となりました。

また、併せて公表された参加者の政策金利見通し(ドットチャート)でも、25年末までに0.25%の利下げを2回しか想定しない水準となり、前回公表のドットチャート(4回)から半減し、株式市場では、「秋口以降に高まっていた過度な利下げ期待」への修正が進んだと思われます。

となると、テクニカル分析的に見た株価は、利下げを開始した9月のFOMC(9月17日~18日)時の株価水準が意識されることになり、NYダウであれば42,000ドル前後が下値の目安となりそうです。18日(水)のNYダウ終値は42,326ドルでしたので、株価はこのまま下落基調を辿っていくというよりも、ひとまずは42,000ドルあたりで下げ止まる可能性が高そうです。

では、ココから先の米国株市場が再び上昇基調を取り戻せるかというと、少し上値が重たくなる展開も想定しておく必要があるかもしれません。今回の米FOMC後に開催されたパウエル米FRB(連邦準備理事会)議長の記者会見では、「米国経済は非常に好調で、世界の主要国よりもはるかに良好な状態」としながらも、今後の政策運営の見通しについては、「新たな段階に入った」と明言したほか、「霧の夜に運転したり、家具でいっぱいの暗い部屋の中を歩いたりするのに似ている状況」など、先行きの不透明感を滲ませる発言が多く見られました。

こうした不透明感の背景には、トランプ次期政権への存在が大きいと思われます。財務長官候補に指名されたスコット・ベッセント氏の登場によって、最近までの株式市場はトランプ政権のポジティブな面を反映する場面が増えましたが、トランプ氏の掲げる政策(規制緩和・減税・関税強化・移民対策)はいずれも、財政悪化や景気の再過熱、コスト増などのインフレ圧力につながりかねない要素を抱えていることに変わりはなく、政策を実行する順番や、その時の経済状況によって、市場への影響度が異なってきます。

2024年相場も年末まであと1週間ちょっととなりました。米国をはじめとする海外の大手金融機関は、2025年の相場見通し(S&P500の終値)を現在の株価水準よりも10%以上引き上げているところが多く、通常であれば年末株高に期待したいところではあったのですが、今回の米FOMCを受けて、株式市場の下落が調整にとどまるのか、それとも、最近までの上昇トレンドの転換期なのかを年末から年始にかけて見極めて行くことになってしまったため、今年は少し厄介な年末を迎えることになるかもしれません。

楽天証券株式会社
楽天証券経済研究所 土信田 雅之が、マクロの視点で国内外の市況を解説。着目すべきチャートの動きや経済イベントなど、さまざまな観点からマーケットを分析いたします。
本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。
銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。

商号等:楽天証券株式会社/金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号、商品先物取引業者
加入協会:
  日本証券業協会
  一般社団法人金融先物取引業協会
  日本商品先物取引協会
  一般社団法人第二種金融商品取引業協会
  一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ