日本株の「現在地」

2024/01/19

今週の国内株市場ですが、これまでのところ相場は崩れていないものの、落ち着かない値動きが目立っており、とりわけ注目されたのが17日(水)の取引です。

この日の日経平均は、午前中に前日比で620円高の36,239円まで上昇し、先週末のSQ値(36,025円)を超えたほか、バブル後の最高値を更新する場面もあったのですが、その後は急激に上げ幅を縮小し、結局、下落に転じて取引を終えました。

かなり荒い展開だったわけですが、日経平均が高値から下げ始めたのが10時半過ぎというタイミングでした。中国(上海)株市場がオープンする時間帯で、上海証券取引所で取引されている日経平均連動型のETF(チャイナAMC野村日経225ETF)の売買が1時間ほど一時停止されたことが売りのきっかけになった模様です。

また、最近の日本株上昇については、不動産問題の拡大による中国経済への不安が高まる中、これまで中国株に流入していた資金が日本株に向かっていることも追い風になっているとの見方がありますが、実際に、中国の投資家も、限られた海外資産投資の選択肢としてETFを活発に取引しており、今回規制の対象となったETFの価格は今年に入ってから20%を超える上昇で、日経平均の上昇率以上の過熱感を帯びていました。

では、このまま日本株の上昇基調が下落へと変化していくのかについては、17日(水)の取引を見る限り、半導体関連のレーザーテックや保険株、外食関連株など、力強く買われた銘柄も多く存在しているため、まだ見極め段階にあると言えます。

確かに、最近の急ピッチな日本株上昇を受けて、相場の過熱感を指摘する見方も増えつつありますが、では、今の株価水準が「高過ぎるのか?」という点については、「市場が織り込んでいる想定」からすれば、決して高くはないと思われます。

「市場が織り込んでいる想定」とは、米国では経済がソフトランディングし、利下げも開始され、企業業績も堅調に推移し、日本では、企業改革が進み、脱デフレを実現し、好調な経済が維持されることなどが主な項目として挙げられます。

注意しなければならないのは、「今の株価が想定をどこまで先取りしているのか」と、「想定が揺らいでしまう状況になること」の2点です。

今後の株価が調整局面を迎えた際、前者であれば、現実とのギャップを埋めるスピード調整となり、株価の下落は絶好の買い場となりますが、反対に、後者だった場合には、想定シナリオの修正となり、期待先行で買われた分、株価が大きく下落して下値を探りに行く展開にもなりかねません。

そのため、現時点の相場は、「スピード感はちょっと早くて心配だが、株価水準自体は決して割高過ぎるわけではなく、上昇基調は続いている。ただし、想定シナリオが揺らいだ際には大きく下落する展開に注意」ということになりそうです。

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