株高期待のウラにある市場と米FRBの「時間軸」のギャップ

2022/11/25

今週の国内株市場ですが、祝日明けとなる24日(木)の日経平均が28,373円でスタートするなど、節目の28,000円台割れとなった先週末終値(27,899円)から株価水準を回復する展開となっています。

テクニカル分析的には、直近の高値(8月17日と11月11日)を結んだ上値ラインと、25日移動平均線による75日移動平均線のゴールデン・クロスの2つの上抜けが注目される中、前者についてはクリアした格好です。引き続き、後者もクリアできれば、移動平均線の並びが25日・75日・200日と期間の短い順に並ぶ「パーフェクト・オーダー」と呼ばれる形状となります。

パーフェクト・オーダーについては、チャートを過去に遡ると、コロナショック後の2020年8月、コロナショック前の2019年9月、そしてチャイナショックやブレグジット後の2016年10月に出現していますが、いずれもその後の株価が一段高となっているため、今後の株価上昇の継続期待が高まることになりそうです。

一方の米国株市場については、24日(木)が感謝祭で休場、翌25日(金)は一大商戦のはじまりとなる「ブラック・フライデー」を迎えるスケジュール感となっていますが、足元で発表される米小売り企業の決算が比較的良好なものが多いこともあり、年末商戦への期待を先取りしてか、NYダウは22日(火)の取引で34,000ドル台乗せまで株価を上昇させています。

最近の米国市場は、年末商戦への期待をはじめ、FRBの金融政策の引き締め緩和観測など、市場が先取りして動く場面が多くなっています。とりわけ、11月10日に発表された米10月CPI(消費者物価指数)がインフレの鈍化を示唆する内容だったことで、株高・債券高(金利低下)、ドル安、原油価格下落などが大きく進んだことは記憶に新しいです。

確かに、米10月CPIをきっかけに、12月開催の米FOMCで利上げ幅が縮小される見通しが強まったと言えますが、市場がその先にある金融政策の修正を織り込みに行き始めたのに対し、FRBとしては、急ピッチな引き締めペースをいったん落として、実体経済への影響を見極めたいという思惑が強く、最近でもタカ派のFRB要人発言が相次いでいるものの、市場はこうしたメッセージに聞く耳を持たないような印象があります。

問題なのは、市場とFRBとの間に「時間軸」のギャップがあることと、市場の先走った動きによって、金融市場やムードが過熱し、結果的にインフレの鎮静化を遅らせてしまう可能性があることです。

目先の株価は日米ともに上振れしそうですが、金融引き締めによる景況感の悪化はまだ始まりを見せたばかりであるため、年末株高観測と同時に時間軸のギャップを修正する動きが出てくる展開にも注意しておきたいところです。

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