大きく動き出したバリュー株

2021/01/27

昨年1月のコラムの冒頭はこういう書き出しで始まっていた。「12月に中国の武漢市を発生源とした新型コロナウイルスによる肺炎。今月になって爆発的に拡大しており、日本でも感染者が増えている」。あれから1年経ち世界での感染者数はついに1億人を突破、正真正銘のパンデミックである。まだまだ収束の気配は見えていないが、マーケットはポストコロナを先取りする形で高値を更新中。本来なら、景気への悪影響を懸念すべき社会的常識とはかなりかけ離れた動きにやや戸惑いながら、私もマーケット参加者の一人として日々過ごしている。さて遅くなったが、12月のポートフォリオの状況ならびに1月の近況について記したい。

12月のマーケットは日米市場ともに堅調な上昇となった。

米国市場は続伸。NYダウは3万ドル台に乗せ主要3指数揃って過去最高値を更新。11月の雇用統計は+24.5万人と予想の+45万人を大幅に下回り、10月の+61万人から鈍化。週間の新規失業保険申請件数は85.3万人と2か月半ぶりの高水準に。一方、9000億ドル規模の追加経済対策の与野党合意がなされ安心感。FRBは完全雇用実現まで量的金融緩和を継続するとの方針を示す。米国政府がファイザーとモデルナから4億回分のワクチン確保のニュースも支援材料に。12月のNYダウは30606ドルと前月より967ドル上昇し月間騰落率は+3.3%。ナスダックは12888となり689ポイント上昇の+5.7%となった。

東京市場も続伸。日経平均は27000円台乗せとなり、1990年8月以来30年4か月ぶりの高値。コロナワクチン実用化の見通しや欧米高を受けて買い優勢に。12月の日銀短観で大企業のDIが-10と予想の-14を上回る。一方、年末年始におけるGoToトラベルの全国停止が決定され、新規のコロナ感染者が連日の過去最高を記録。SBGが株式の非公開化を議論していると伝わり急伸。為替は先月末の103.95円から今月末は103.30円とやや円高に。売買代金は2.3兆円程度と商い細る。12月の日経平均は27444円で取引を終え、11月末の26433円から1010円上昇し月間騰落率は+3.8%、Topixは+2.8%となった。一方、小型株市場はジャスダック平均が+1.6%、マザーズ指数は-2.9%となった。

太田忠投資評価研究所のインターネットによる個人投資家向け「投資実践コース」  における12月のパフォーマンスは+4.5%となり、年初来+14.7%、累計では+200.6%(11月末+187.6%)と大きく前進。

モデルポートフォリオは運用開始以来+200%を突破した。12月末時点のポートフォリオの株式比率は81%で32銘柄を保有(11月末は80%で31銘柄を保有)。株式部分の含み益は+56.9%(11月末は+49.5%)。ただし、80%のうち現物株のウェートは45%、日経レバレッジETFの保有比率20%の実質ロング比率は40%でロングは合計85%。これに対し日経ダブルインバースETFの保有比率10%の実質ロング比率は-20%、純金ETF5%は株式とは逆の動きをするため、これらのロング比率は-25%。トータルでは60%のロングポジションである。

11月のマーケットは急騰したため12月はその反動安が警戒されたものの、日に日に悪化するコロナ感染拡大よりもコロナ対策による景気浮揚の方により注目が集まった。日米市場とも高値を更新する展開となった。

1月のマーケットも調整局面らしき調整はなく堅調に推移している。ただし、これまで買われてきた成長株やIT系銘柄の勢いが鈍る一方で、我々が注目してきた小型の超割安景気敏感株が動き始めている。以前紹介したことのある日本金属、日本鋳造、富士石油といった銘柄群だ。先月のコラムにおいて「成長株やIT系のバリュエーション的に見れば行き過ぎた水準」「高PBR銘柄がバンバン上がり、低PBR銘柄との格差がインターネットバブル時代並みに広がっている」と指摘していた。メディアでは「これまでとは違った新時代の銘柄選択が必要だ」という論調が多いが、異常な格差が今後ずっと続くと考えるのは危険である。いつかは逆回転が起こり、割高なものは修正されていくのがマーケットの常だ。そういう流れが徐々に起こりつつあると思う。

マーケットの先行きにおいて懸念点は2つ。ひとつが、米長期金利がじりじりと上昇する傾向が強まっていることである。金融緩和の流れはまだ続きそうだがこれが一転して方向転換すれば、景気動向に関わらずマーケットは逆回転する。もうひとつが、労働市場の動きである。経済活動への制約が長引いて明確な失業率上昇ともなればマーケットの調整要因となる。

さて、今週から日本においても10-12月決算の発表が本格的に始まっている。決算発表をひとつずつ点検しながら、より一層のパフォーマンス向上に努めていきたい。

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