2024年何故米日が世界経済をけん引するのか
【ストラテジーブレティン(347号)】
謹賀新年
良き新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
期待に胸が膨らむ新年、皆様のご健闘をお祈り申し上げます。
令和6年 元旦
株式会社 武者リサーチ
ここ数年世界経済は驚天動地の変化に見舞われた。だが2023年までで世界経済情勢の基本的軸はおおむね定まり、2024年はその延長線上での展開が想定される。巨視的に見れば、1)地政学、米中対立と2)新産業革命を軸として世界経済は展開されていくだろう。また世界経済の牽引車もシンプル、米国と日本であろう。何故なら両者が1)、2)の受益者だからである。
米中対立が決定的に重要な理由は、過去数十年間続いた国際分業が、抜本的に作り変えられるからである。米国を始めとする自由主義諸国は中国への供給力依存に耐えられず、総力を挙げて脱中国の供給体制構築を進める。その最大の受益者がかつて米国の日本たたきで沈下していた日本である。半導体、自動車、鉄鋼等かつて日米が競い合っていた分野で、厚い日米産業協力が進む。超円安はそのための必須かつ強力な手段である。中国に代替できるハイテク製造業の産業集積を構築できる国は日本しかない。
これからの世界の最大の成長領域は、インドでもアフリカ等グローバルサウスでもなく、「第七大陸」、国境のないサイバー空間である。この「第七大陸」を米国企業が圧倒的に支配している。スマートフォンの普及一巡で一旦成熟期入に入ったかと思われていた「第七大陸」はチャットGPT等ブレークスルー新技術により次の成長段階に入った。「第七大陸」の支配者GAFAM+の本当の強さはまだ見えていないのではないか。「第七大陸」のゲートキーパーが半導体・エレクトロニクスと言うハードウェア。日本が得意とするサイバーフィジカルインターフェイスがものをいう時代でもある。
覇権国通貨ドルはその強力な技術優位と企業の稼ぐ力により、さらに強化されていくだろう。強いドルは米国が海外から安く仕入れ海外に高く売ることを通して米国に不当と思えるほどの交易利得とシニョリッジ(=返済義務のない借金)をもたらす。強いドルによって倍加される米国の経済優位性は、時間をかけつつ専制諸国家を圧倒していくに違いない。専制国家専横の悲劇はウクライナを見れば明らか、世界は強いドルを通した米国覇権の強化を歓迎するだろう。その米国の最大の軍事、経済、産業面での同盟国日本はかつてなく有利な立場にある。