安倍元首相追悼セミナー講演録 ①
安倍晋三氏と日本、そして世界
【ストラテジーブレティン(310号)】
武者リサーチは7月21日、安倍元首相追悼セミナーを開催しました。
産経新聞ワシントン駐在客員特派員古森 義久氏をお招きし、「安倍晋三氏と日本、そして世界」と題する講演をしていただきました。同氏のご快諾を得て、講演録①として当号に掲載いたします。
同セミナーでの武者の経済面からの講演「アベノミクスの歴史的功績と日本の未来」は、次のストラテジーブレティン311号にてご報告する予定です。
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安倍晋三氏と日本、そして世界
古森 義久 氏 講演録
本日は皆さんお集まりくださって有難うございます。この素晴らしい企画、安倍晋三さんという日本にとっても国際社会にとっても特別な人が、非常に不慮のなんとも納得のできない亡くなり方をしたことに対して、まず弔意を表そう、そしてどういう実績が彼にはあったのかを語ろうという集いをこの時期に催すということは非常に前向きな日本全体にとっても大きなプラスになる企画だと思います。
若竹のような青年だった
安倍晋三ウォッチャーというのは無数にいるわけです。安倍晋三サポーターももっとたくさん政治の世界はもちろん、ビジネス、マスコミ、あるいは学界に存在します。そんな中で、私がなぜあえて皆様の前でお話できるのか、3つほどの背景をご説明したいと思います。もし私に安倍晋三氏を語る資格があるとすれば、第一に考えられるのは、やはり安倍さんを知って交流があった期間がきわめて長いということです。考えてみると、ちょうど 40年前の1982年に初めて安倍さんと会いました。私はその前に毎日新聞のベトナム特派員、その後すぐにワシントン特派員をやって、ほぼ10年海外で国際報道に没入してきました。その直後から東京での政治部の記者として外務省を担当しました。
ちょうどその時に安倍晋三さんは、お父様の安倍晋太郎さんこの方も昔は毎日新聞にいましたが外務大臣になったので、その秘書官として外務省に入ってきました。まだ若くて 20代の後半でしたが、彼もロサンゼルスに留学したり神戸製鋼という民間の会社で働いたりして一通りの社会生活は経てきたわけです。
そこで記者側、外務省側、両方の若手を中心に勉強会をしようということになりました。そこに安倍さんも入ってきたのです。安倍さんが中心になるという感じはあまりなかったですが、彼は印象的な青年でした。非常に爽やかな、若竹を思わせるようなスラッとしていて、パッとポイントを突く発言をするのです。けれども時々ふと黙って深い思索に入っていくような感じがあって、そんなふうに寡黙になるのは、若者にしては珍しいなという印象を私は受けたのを覚えています。いま思えば、彼が人の話をよく聞き、その場その場でそうして聞いた言葉を深く考える習慣があった、ということでしょうか。
国際情勢への強い関心の若手政治家
それから2つ目に、安倍晋三さんと私との交流というのはやはり国際的な文脈、国際情勢の中でいろいろ語りあったことです。私が初めて会ってから10年近くしてから、彼は国会議