海の異変を探る ~「水産株」はディフェンシブ株の地位を守れるのか~

2018/11/02

株式マーケットには一般的に景気動向の影響を受けにくい「ディフェンシブ株」と呼ばれるものがある。食品やインフラなど、日常生活に密接する産業の株式がその典型である。

たとえば「水産株」がそれである。弊研究所が度々言及したとおり、10月には日経平均がまさに「暴落」どころか「瓦落」とでも言うべき局面を迎えた。その中でも「水産」銘柄は24日、業種別騰落率で値上がり率トップを記録したという(※1)。しかし、水産株がそうしたディフェンシブ株としての地位を失う可能性が小さくないというのが本稿の結論である。

魚といえば、近年の値上がりが我々の食卓を直撃している。たとえば7月10日、今年初めてサンマの水揚げが釧路漁港であった。その水揚げ量は700トンで、昨年のなんと3分の1しかなかった(※2)

こうした漁獲高の現象に対し、極洋(証券番号:1301)(※3)日本水産(証券番号:1332)(※4)マルハニチロ(証券番号:1333)(※5)といった大手水産企業が軒並みコスト高騰を喫緊のリスクとして警告しているのは言うまでもない。各社によれば、現在は調達の工夫などで価格転嫁を抑えているのが現状であるという。

ではなぜ漁獲高が減っているのか。その一つには台湾や人口増加の著しい中国などが大量捕獲を行っているからだという指摘も少なくなく、国際問題にもなっているのが実情である。たとえば先程述べたサンマ漁については、7月に北太平洋漁業委員会(NPFC)において漁獲制限に関する議論があった。日本や中国、台湾に韓国、さらにロシア、バヌアツ、そして米国、カナダが参加したこの会合では、我が国が提案した公海における漁獲枠設置の合意は叶わなかった(※6)。またウナギの値上がりは読者も良く聞く話であろう。

しかし、それよりも憂慮すべきなのは気候変動である。弊研究所による気候変動に関する議論を今一度まとめるとこうなる:

  • 太陽活動が非活発化し、太陽黒点数が減少、極端な時にはゼロとなる
  • この結果、元来地球を守っている地磁気がバリアーとしての役割を果たさなくなり、地表に降り注ぐ宇宙線の量が増大する
  • 宇宙線は電子レンジによる加熱の源となっているのと同じβ線を含むため、宇宙線により海温が上昇し雲ができやすくなる
  • そうして発生した雲が降雨や降雪を通じて地表面を冷やす。また大量の雲は日光を遮断するため、地表に降り注ぐ熱量も減少するために、寒冷化が生じる

ここで注目したいのが3番目である。宇宙線により海温が上昇しているのである。具体的には赤道付近の海域を中心に海温が上昇しているのである。世界の海が海流を通じてつながっているのは言うまでもない。そうすれば魚類もそれまでの生態系が破壊される。漁獲高が減少しているのは、そうした環境変化も在ってそもそも漁獲地域が変わっているということを忘れてはならない。

たとえば戦前から戦後直後は庶民の味方であったものの、その後は価格が上がり続けていたイワシについて、北海道沖での漁獲高が上昇し続けているのである(※7)。こうした現象にはいくら企業であっても簡単に抗うことはできないのである。まただからこそ、漁獲量制限に対して外国を槍玉に上げつつ国際会合に持込み、自らに有利な様に漁業海域を再設定しようと各国は画策しているのだというのが筆者の見解である。

もう1つ忘れてはならないのが原油価格である。燃料価格に直結する原油価格が上昇の危機を迎えている。弊研究所は定量分析と定性分析の両方を重ね合わせることで、どの金融マーケットがどのタイミングでトレンド転換を迎えるのか、またその理由・要因が何になるのかを分析している。ここでは詳細を省くが、それを見る限りWTIの動向は決して油断できない。

いわゆるカショギ事件を巡りサウジアラビアが世界中からバッシングを受けている。サウジアラムコ社の上場延期を決定している(※8)。更にはイランに対するバッシングも強まっている。デンマークでイランのインテリジェンス機関が暗殺計画を実施しようとしていた旨、リークされているのだ(※9)。日本ではそこまで大きく取り上げられていないものの、イランに対するアメリカの経済制裁強化がグローバル経済に与える影響、特に原油マーケットに与える影響に対する警告は強まっている。

こういった外部要因のあまりの強さに対し、水産株がどれだけ耐えることが出来るのか。ディフェンシブ株は基本的に需要が安定しているために安定的だというのがその根拠である。しかしグローバル化が進展した今、バリュー・チェーンで外部要因と関わらない企業は存在しない。安定はどこにも存在しないのであり、だからこそ、リスクを取り続けるしかなく、そのためにも自ら情報から意味を取り出す訓練が必要である。またその訓練に助力すべく弊研究所があるのである。

*より詳しい事情についてご関心がある方はこちらからご覧ください(※10)

 

※1  https://minkabu.jp/news/2233208

※2 https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2018_0712.html

※3 https://www.kyokuyo.co.jp/wp-content/uploads/post/pdf/180626.pdf

※4 http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS06310/cb36b672/01da/454e/8ccf/6ea9d51a49cf/20180628094521717s.pdf

※5 https://www.maruha-nichiro.co.jp/corporate/ir/library/pdf/180627_MN_yukashoukenhoukokusho.pdf

※6 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32682740V00C18A7EE8000/

※7 https://mainichi.jp/articles/20181029/k00/00e/040/152000c

※8 https://jp.reuters.com/article/saudiaramco-ipo-cancelled-idJPKCN1L7226

※9 http://www.faz.net/aktuell/politik/ausland/iran-soll-attentat-in-daenemark-geplant-haben-15865472.html

※10 https://www.mag2.com/m/0000228369.html

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所
原田武夫グローバルマクロ・レポート   株式会社原田武夫国際戦略情報研究所
トムソン・ロイターで配信され、国内外の機関投資家が続々と購読している「IISIAデイリー・レポート」の筆者・原田武夫がマーケットとそれを取り巻く国内外情勢と今とこれからを定量・定性分析に基づき鋭く提示します。
・本レポートの内容に関する一切の権利は弊研究所にありますので、弊研究所の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することは固くお断りします。
・本レポートは、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。金融商品の売買は購読者ご自身の責任に基づいて慎重に行ってください。弊研究所 は購読者が行った金融商品の売買についていかなる責任も負うものではありません。

このページのトップへ