気候変動がもたらすビジネス・チャンス ~ペットにまで忍び寄る薬剤耐性菌と躍進するペット保険~
10月になると世界中で話題になるのがノーベル賞だ。10月8日(ストックホルム時間)には、スウェーデン王立科学アカデミーが米イェール大のウィリアム・ノードハウス教授と米ニューヨーク大のポール・ローマー教授にノーベル経済学賞を贈ることを公表した(※1)。ノードハウス教授は気候変動と経済成長の関係を分析し炭素税の導入に貢献したことが授賞理由であるという。
また同月6日には、国際連合に設置されている「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」がこれまでの地球温暖化が継続すると産業革命以前よりも平均気温が1.5度上昇することを警告している(※2)。
我が国では地球温暖化に対する危機が依然として叫ばれている。しかし実は世界はこれから寒冷化に向かいつつあり、そうした中で我々は病気にかかりやすくなっているのだ。それは動物にとっても例外ではない。だからこそペット保険というマーケットの有望性がますます増大する蓋然性が高いことを今回は議論したい。
寒冷化?何を言っているのか。国際連合が設置した部門が提言しているのだから間違いないのではないか。読者諸兄はそう思ったかもしれない。しかし、この「気候変動に関する政府間パネル(以降、IPCC)」が2009年に起きた事件(※3)で信頼性を減じているのは事実である。またIPCCの言及は「これまでの温暖化が継続するならば」という前提条件の下での議論であることに注意したい。
気候変動、特に温暖化に関する議論では二酸化炭素を中心として温室効果ガスが大きく取り上げられがちであるものの、実際に問題なのは「雲」である。この分野での先駆者であるデンマークのヘンリク・スベンスマルク教授は宇宙線の到来が雲を発生させるメカニズムに対する仮説を述べている(※4)。これは欧州原子核研究機構(CERN)が「CLOUD」と呼ばれるプロジェクトを通じて実験済であり、裏付けが取れているものだ。
こうした背景も踏まえつつ、弊研究所の分析において最も基本になっている気候変動に関する見解を大雑把に述べると以下のメカニズムとなる:
- 太陽活動に非活発化し、太陽黒点数が減少、極端な時にはゼロとなる
- この結果、元来地球を守っている地磁気がバリアーとしての役割を果たさなくなり、地表に降り注ぐ宇宙線の量が増大する
- 宇宙線は電子レンジによる加熱の源となっているのと同じβ線を含むため、宇宙線により海温が上昇し雲ができやすくなる
- そうして発生した雲が降雨や降雪を通じて地表面を冷やす。また大量の雲は日光を遮断するため、地表に降り注ぐ熱量も減少するために、寒冷化が生じる
たとえば今年の夏は体温近くにまで気温が上がる日があった一方で、夏とは思えないような涼しい、場合によっては寒い日があったのを読者は記憶していると思う。気候変動のミソは、そのように暑くなったり寒くなったりと日々で大きくブレつつも、トレンドとして寒冷化方向に進展しつつあるということなのである。
では、その寒冷化が何をもたらすのか。最近、平熱が36度を下回る「低体温」気味の子供が増えているというが、温度が下がると免疫細胞の働きが著しく弱まることが知られている(※5)のだ。これは動物としての人類の話であり、家畜やペットでも同様である。すなわち、寒冷化に伴いペットや家畜の免疫力が低下しているのである。
実際、8月には中国でアフリカ豚コレラが発生した(※6)。さらに先月9日には岐阜市で国内の事例としては26年ぶりに豚コレラ(中国でのものとは別の種類のウィルス)が発生したが、収束は依然として困難であると報道されている(※7)。
さらにはペット・ショップで子犬が保有する薬剤耐性菌が人に感染するという事例が米国で年間100件以上報告されている(※8)という衝撃的な情報もある。(人に対する感染という意味での)薬剤耐性細菌は、昨年ドイツで開催されたG20でメルケル首相が他国への根回し無しに急遽アジェンダとして提起したという経緯があり、グローバルでも関心の高いテーマであるが、それがペットにも深刻な影響を与えているのだ。
傷病に掛かるリスクが高いならば、それをヘッジすべく保険に入ればいいと読者諸兄は考えるかもしれない。しかし大手保険会社が頻繁にTVなどでCMを流す一方で、動物に関する保険はあまり聞かないのではないか。実のところどうなっているのか。
ペット保険マーケットは昨年ベースで32億ドルの規模があり、2023年までの予想年平均成長率は14.4%もあるという報告がある(※9)。たとえば北米では2013年から2014年までの調査で7.74億ドルの規模がある(※10)との調査結果を業界団体が報告している。では、我が国ではどうかというと、2015年には正味収入保険料が400億円を突破しており、2009年から2015年までの同保険料の年平均成長率は23.7%に上っている(※11)のだ。
しかも、現状でペット保険加入率は5%余りしかなく、ペット保険発祥の地である英国での57%(※犬について)や北米での平均15%という数値に比べればまだまだ低い(※12)。さらに、ペット保険マーケットはアニコム ホールディングス(証券番号:8715)およびアイペット損保(証券番号:7323)という二強の寡占状態になっているという(※13)。
我々に対する生命保険や損害保険に比べれば微々たるマーケット・サイズかもしれない。しかしだからこそ、ニッチ産業として、しかもそれは一般的に見れば巨大なマーケット規模があるとして有望だとの見方もできると言える。
寒冷化に至れば、人類の移動は少なくなりがちであるため経済活動は停滞することになる。しかしその一方で生じるビジネス・チャンスを逃してはならない。
(*より詳しい事情についてご関心がある方はこちらからご覧ください(※14))
(※1) https://www.asahi.com/articles/ASLB86KCXLB8UHBI127.html
(※2) https://www.sankei.com/life/news/181006/lif1810060043-n1.html
(※3) http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8370282.stm
(※4) https://www.nature.com/articles/s41467-017-02082-2
(※5) http://www.hokenjigyoudan-tottori.or.jp/jigyoudandayori089.pdf
(※6) https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/09/post-10970.php
(※7) https://mainichi.jp/articles/20181010/k00/00m/040/098000c
(※8) https://www.scientificamerican.com/article/pet-store-puppies-blamed-for-drug-resistant-infections/
(※9) https://www.reuters.com/brandfeatures/venture-capital/article?id=47290
(※10) https://naphia.org/industry/
(※11) https://pedge.jp/reports/insurance/
(※12) https://pethoken-hikaku.jp/petInsuranceBuyingRate.php
(※13) https://pedge.jp/reports/insurance/
(※14) https://www.mag2.com/m/0000228369.html
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