ウイスキーという「命の水」の価格高騰?
スコットランドのある男性は勤めていた蒸留所のウイスキー「マッカラン」を誕生以来毎年1本息子に贈り続けた。18年物のマッカランのシングルモルト・スコッチ・ウイスキーに最終的に費やした額は約5,000ポンド。今年(2020年)28歳になった息子のコレクション時価総額はその8倍の4万ポンドになっていた。「父が毎年誕生日に贈ってくれていたものが私の人生にこれほどの可能性があるとは思ってもいませんでした」。息子はそれを初めての家の購入に使う予定だという(参考)。
(図表: ウイスキー)
(出典:Wikipedia)
「命の水」を意味する古いゲール語(Uisce beatha)が訛ってそう名付けられた「ウイスキー」。そうしたウイスキーの中でもとりわけ世界的に希少性の高いウイスキーが高騰している。中でも海外から「ジャパニーズ・ウイスキー」と呼ばれる日本産のウイスキーは手も足も出ないほどの値段になっている。もっとも「ジャパニーズ・ウイスキー」がここ数年で何か変わったからというわけではない。むしろそれが世界的に「最高級のウイスキー」として知られるようになったからだ。インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)やウイスキー等の世界的な酒類品評会(ロンドン)で日本産のウイスキーが最高賞や金賞を受賞するようになった。しかし熟成に10年以上かかること、しかも「先物(Whisky Futures)」として売るつもりではなかったことで深刻な供給不足が発生している(参考)。
「キーパーズ・オブ・ザ・クエイヒ」(The Keepers of the Quaich)という団体がある。ウイスキー業界に突出したコミットメントを示した人だけが入ることを許される排他的な国際組織だ(「クエイヒ」は古いゲール語でウイスキーを飲むコップを意味する)。主要な蒸留所によって設立された同組織はスコッチ・ウイスキー業界の心臓部である。
(図表: クエイヒ)
(出典: Wikipedia)
この組織の会員でもある2名のスコットランド人が立ち上げたRare Whisky 101はウイスキーのコレクターと投資家たちのために希少なウイスキーの平均的な価格動向を表す「APEX1000指数」を提供している。ここでも日本のウイスキー関連のインデックスは人気だ。「ジャパニーズ100」インデックスの2014年12月29日から2020年9月28日までのパフォーマンスは+317.63%である。樽の残りが少なくなってきていることもあり非常に需要がある「レアウイスキー軽井沢(RWK、Rare Whisky Karuizawa)」インデックスは2013年7月から2020年9月28日時点までで+673.84%のパフォーマンスとなっている。
我が国のウイスキーの中でも海外勢に特に人気の銘柄としてはニッカウヰスキーが製造しアサヒグループホールディングス(2502)が販売する『余市』がある。またさらに宝ホールディングス(2531)の『キングウイスキー』も人気がある。
一方で何をウイスキーとするかという定義と法律が明確でないために日本産の焼酎がウイスキーとして海外で販売されているといったケースもあるようだ(参考文献)。これは放っておくと海外における日本の酒ブランドにも影響を与えうるため今後の課題であろう。
何に価値を置くかは時代と共に移り変わる。また今年2020年世界中で起こったパンデミックも人々の価値観に影響を与えた。これからもウイスキーに限らず新たな投資の対象が他に生まれてくるかもしれない。
グローバル・インテリジェンス・ユニット Senior Analyst
二宮 美樹 記す
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