AI投資に全力で取り組め~ソフトバンクワールド

2018/09/10

・8月にソフトバンクの展示会「ソフトバンクワールド」が開催された。今回で7回目であるが、孫さんのプレゼンは毎度迫力がある。すでに投資を通してビジネスを協業している8社のCEOも招いて、全体で3時間のセッションを仕切った。その中で、印象に残った内容のエッセンスを紹介したい。

・未来はどうなるのか。必ず前ぶれ(予兆)はあるので、それを自分達のコトとして捉えていく必要がある。AIにおけるシンギュラリティは人類史上最大のビックバンとなる。超知能が生まれてくるので、すべての産業が再定義されることになろう。AIにおいては、クラウドサイドと同様に、エッジサイドの役割も重要で、この双方がカギを握る。

・どうしてARMを買収したのか。多くに人は、SB(ソフトバンク)を通信の会社と思っているかもしれないが、会社の歴史35年の中で、通信はこの10数年のビジネスである。AI時代を迎えて、ARMはエッジ側のチップとして必須である。

・世界のスマホは年間15億台販売されているが、その全てにARMのチップはコアパーツとして入っている。これからARMのチップにAI機能を入れていく。その需要は爆発的に伸びてくるので、イノベーションをリードしていくという考えである。

・AIでは米国と中国がトップを走っている。20億人の顔が識別できるなど、AIを使って予測能力は大幅に上がってくる。AI活用組みの企業に抜かれたら、自社の競争力を取り戻すことは限りなく難しくなる。新しいエコシステムが形成されるからである。

・AIを制するものが未来を制する、といってもよいと断言する。日本のほとんどの企業はまだAIをみているだけで、真剣に自社のビジネスに取り入れていない。10年後は重要になると感じているなら、どうして今全力で取り組まないのか。それができないなら認識が甘いと警鐘を鳴らした。

・いずれAIは誰でも利用するようになる。そのAI活用のソリューションを提供する会社が成長している。AIを作るためのAIツールが次々に提供されるようになろう。

・AIは新しいサービスを提供する。既存の産業を壊すことにもなるので、既存の産業を守っている規則は見直す必要がある。この動きが日本は遅い。これでは、AIの産業化に乗り遅れてしまう。

・車のライドシェアリングはこれから大発展しよう。車を自ら所有する必要はない。自動運転も当たり前になろう。都市の信号システムも一新される。将来、ヒトが車を運転することはできなくなる。

・ロボタクシーだけが公道を走り、ヒトの運転する車は乗馬のようにホビーとなろう。車は信号機のない街を時速200㎞で普通に走るようになる。自動運転が完全にコントロールされれば、何ら不都合のない世界が実現すると構想する。

・金融では、スマホがエッジデバイスになっている。QRコードとクラウドで、何でもトランザクションが済んでしまう。モバイルペイメントでは中国、インドが先頭を走っており、日本はとっくに抜かれている。

・ペイメントを押さえていくと銀行機能が手に入る。AIとBC(ブロックチェーン)を利用していくと、トラッカビリティ(追跡可能性)が圧倒的に向上する。世界中で履歴がとれるようになると、汚職がなくなるかもしれないという。すべてが、ばれてしまうからである。

・保険でもAIが活躍する。AIをユーティリティとして使い、十分データがなくても、保険のプライシング、つまりリスクの可視化ができるようになる。Q&Aのチャットボットで自動化を図り、エコシステムとしてパートナーをつないでいく。そうすると、ダイナミックに、リアルタイムで保険が提供できるようになる。既存の保険会社はどうするのか、真剣に考える必要があろう。

・医療はどうか。ショッピング、タクシーと同じように、ドクターもオンラインで注文できるようになろう。実際、中国では病院が圧倒的に足りない。病院では、やたら待たされる。そこで、AIとインターネットでこれを解決しようとしている。

・24時間、365日営業、待ち時間ゼロで、まずAIファミリードクターがサポートする。ヒトの5倍の効率である。ドクターと病院、医療サービス機関や薬局まで結ぶようになる。薬も1時間以内に届く。こんなシステムが中国では走り出している。日本はどうか。既存の規制や仕組みを守って、未来を放棄するというのか。そんなことでは本当に遅れてしまう。

・地図は本当に役に立っているか。ライブロケーションを知りたいと思うのが今のニーズである。車が走っていれば、ライブロケーションデータがセンサーからどんどん入ってくるようにする。地図を生きたものにすることができる。地図のない国も調べることができる。ライブデータがエッジ側で逐次収集されていく。これを活用すれば、今の現場の状態が手に取るように分かるようになる。

・SBは一貫して情報革命をリードしていく方針である。PC→モバイル→AIへと展開している。通信会社から投資会社に変貌しようとしているわけではない。AIに関する世界のトップサービスファミリ―を形成して、イノベーションをサポートし、リードしていく。

・これを、SBの孫さんは群戦略と称している。AI群戦略を、これからも圧倒的パワーで展開しよう。インターネットの黎明期は残念ながら資金が十分でなかったと顧みる。今はファイナンス力がある。その投資資金を活用してAIをリードする一大企業群を創ろうとしている。やはり、SBに投資して十分フォローしていく必要があろう。

株式会社日本ベル投資研究所
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