日銀短観(17年3月調査)について
- 業況判断DIでは、足元の業況が好調な一方、依然として先行きには慎重な姿勢が見られました。
- 企業業績、設備投資は引き続き慎重ですが、人手不足感は強まる一方、設備も不足感が出ています。
- 先行きを慎重に見て、前向きな活動を抑制することは、今や限界に近づいていると思われます。
続く「足元好調、先行き慎重」
本日発表された、日銀短観(全国企業短期経済観測調査)の3月調査によると、業況判断DI(最近)は、最も注目される大企業製造業が前回調査比+2の+12となりました。改善は2回連続です。事前の市場予想の+14は下回ったものの、前回調査の業況判断DI(先行き)の+8より上昇しました。一方、業況判断DI(先行き)は、大企業製造業が+11と最近に対して1ポイント低い水準でした。
企業の業況は、「先行きに対して慎重であったが実際はもっと良かった。しかし先行きに対しては依然慎重」という状態が1年程度続いています。この傾向は製造業、非製造、規模を問わず見られる現象です。16年は年初から円高傾向となり、企業の収益環境が悪化するという見方が強まったことが影響したと見られます。
企業業績や設備投資についても慎重な姿勢です。収益・設備投資計画によると、17年度は、経常利益(全規模全産業)が前年比-1.1%、設備投資(ソフトウェア・研究開発投資除く)は同-1.3%です。ドル・円相場の見通しが108円台と、円高が予想されていることも影響したと見られます。ただし、次年度の初回調査に当たる3月調査は慎重な数値になるケースが多く、双方とも今後上方修正される可能性が高いと思われます。
「慎重」は今やリスク?
こうした中、人手不足感がさらに強まっています。雇用人員判断DI(全規模全産業)(最近)は-25でした。DIの上昇局面という条件で過去と比較すると、89年8月調査※以来のマイナス幅であり、バブル経済の絶頂期並みの人手不足です。また、先行きは-26と、人手不足感はさらに強まると見られています。規模別に見ると、中堅・中小企業、特に非製造業は-30を超えており、もはや人手不足は限界まで来ていると思われます。
人手不足解消を可能にする設備投資も、最近では不足感が強まりつつあります。生産・営業設備判断DI(全規模全産業)(最近)は-2と92年2月調査以来約25年ぶりの低水準でした(80年代に同DIはありませんでした)。人手不足の解消のための必要な設備投資を行う必要性が高まっていると見られます。
企業活動には様々なリスクがあり、手放しの楽観は禁物です。しかし、先行きに対して過剰に慎重となり、必要な雇用や投資に対して後ろ向きになることは、却って企業の成長性を損ねることにもつながりかねません。今や企業は、前向きな活動に踏み出すことが待ったなしの状況に至っているのではないかと思われます。
※96年までは、2、5、8、11月調査
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