来週の金融市場見通し(2025年7月7日~2025年7月11日)
■来週の見通し
トランプ米政権の主要政策を盛り込んだ大型の減税・歳出法案が米上院、下院を通過し、大統領の署名で成立することになりました。また、米雇用統計で雇用者数が市場予想以上に増えたことなどを受けて、米景気懸念が後退する格好になりました。他方、9日に相互関税上乗せ分の猶予期限を迎えますが、トランプ大統領は日米の合意に懐疑的な見方を示すとともに、関税を30~35%に引き上げる可能性を示唆しました。来週は米相互関税に加え、内外の経済指標なども確認しながら方向感を探ることになりそうです。
◆株価 :荒い値動きとなる可能性
今週の日本株は、一進一退の動きとなりました。週初は買いが優勢となりましたが、トランプ大統領が1日に、日米関税交渉について、日本との合意が難しいとの考えを明らかにしたことが嫌気され、売りが優勢となる場面もありました。
来週は、日米関税交渉の動向を受けて荒い値動きとなる可能性があります。米政権による相互関税の上乗せ措置の猶予期限が9日に迫るなか、日米交渉の動向が相場を動かす材料となりそうです。合意に至った場合や猶予期限が延長された場合、相場の押し上げ要因となりそうです。他方、交渉が進展せず追加関税が課された場合、製造業を中心に企業業績悪化への懸念から、株価を下押しするとみられます。報道各社による20日の参議院議員選挙に関する情勢調査も市場を動かす可能性があります。
◆長期金利 :低下しにくい
今週の長期金利は上昇する動きになりました。10年国債入札が順調な結果となったことから、1日には長期金利は1.4%を割り込みました。その後は米財政懸念や底堅い米雇用統計を受けて米長期金利が上昇したことや、発行額が減額された30年国債入札が買いが広がらない弱めの結果だったことなどから、国内の長期金利は一時1.45%を上回る水準まで上昇しました。
来週の長期金利は低下しにくい状況が続きそうです。米雇用統計が労働市場の底堅さを示し、米連邦準備理事会(FRB)が利下げに慎重な姿勢を維持するとの見方が広がっていることや、30年国債入札が弱く、需給懸念もくすぶることから、長期金利は低下しにくい状況です。とはいえ、5年国債、20年国債入札が無難な結果になると、安心感から金利が低下することも想定されます。
◆Jリート :方向感を見出しにくい
今週のJリート市場は、小幅に下落しました。週初、戻り売りに押されて下落したものの、その後週末にかけてじりじりと下値を切り上げ、週初の下げを概ね埋める展開となりました。今週末の分配金利回りは4.902%(東証上場REITの予想分配金利回り、QUICK算出)でした。
来週は、日米長期金利の動向や米相互関税の停止措置をめぐり、方向感を見出しにくい展開を見込んでいます。米相互関税の上乗せ部分の停止措置の期限が9日に迫る中、日米貿易協議は合意点を見いだせておらず、高関税が現実のものとなるリスクがあります。一方、停止措置が再延長されれば、一旦市場は安心することが見込まれます。来週も一定の戻り売りが出ることが想定されますが、5%程度の予想分配金利回りに着目した一定の買いが引き続きJリートを下支えすることが期待されます。
◆為替:日米通商交渉を見極める展開
今週のドル円相場は、1ドル=144円前後のレンジで推移しました。トランプ大統領によるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長への利下げ要求を受けて、FRBの早期利下げ期待が高まったことなどから、一時は1ドル=143円を割る水準までドル安・円高が進行しましたが、その後は、米長期金利の反発などからやや戻しました。
来週のドル円相場は神経質な動きが予想されます。米政権による相互関税の上乗せ措置の猶予期限を7月9日に迎えるなかで、日米通商交渉を巡る動きが材料視される見込みです。合意に至った場合や猶予期限が延長された場合には、日銀の利上げ観測が高まることで、ドル安・円高の進行が予想される一方、合意に至らず、米国が日本にさらなる追加関税を課した場合には、ドル高・円安が進行すると見込まれます。
◆米国株 :関税交渉に注目
今週の米国株は、堅調な動きとなりました。米連邦議会で減税・歳出法案が可決され、米経済を押し上げるとの期待から買いが優勢となりました。また、米雇用統計が市場予想を上回る内容となり、雇用が悪化するとの懸念が和らいだことも株価の押し上げ要因となりました。
来週は、関税交渉に関する動きが注目されます。相互関税の上乗せ措置の猶予期限が9日に迫る中、米国と各国との関税交渉が相場を動かす材料となりそうです。日本やEU、カナダなど主要国との交渉が不調に終わり、上乗せ措置が発動されることになると、株価の下押し圧力になると予想されます。他方、交渉が延長となった場合や、妥結した場合、市場には安心感が広がりそうです。昨年末の最高値水準が迫る中、利益確定売りに押される展開も想定されます。
■来週の注目点
毎月勤労統計調査(5月) 7月7日(月)発表
毎月勤労統計調査によると、4月の名目賃金(現金給与総額)は前年比+2.0%の増加と、前月(同+2.3%増)から伸びが縮小しました。また、実質賃金は同-2.0%と、4か月連続で減少しました。一般労働者を中心に所定内賃金の伸びが拡大した一方、特別給与の伸びが大きく減速しました。
5月の実質賃金はマイナス圏での推移が見込まれます。今年の春闘での賃上げ率の適用が広がることで、一般労働者の所定内給与の伸びが拡大すると予想されるものの、食料を中心に物価が高騰するなかで、賃金の伸びが物価上昇に追いつかない状況が続くと予想されます。
中国生産者物価、消費者物価(6月) 7月9日(水)発表
5月の中国の消費者物価指数(CPI、総合)は前年比0.1%低下と、4か月連続のマイナスとなりました。原油安を背景にガソリンなどの価格が低下したほか、消費者の節約志向が高まるなかで、幅広い品目の価格の下落が続きました。
6月のCPIは前年から横ばい圏での推移が予想されます。足元では政策効果などを受けて、個人消費に持ち直しの動きがみられていますが、不動産不況などの構造的なデフレ要因も根強いため、インフレが定着するまでには時間を要するとみられます。
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