中国発の財政問題は深刻化するのか?

2013/04/26

前回に続き、今回のテーマも中国です。

4月に入り、大手格付け会社による動きをきっかけに、中国の財政問題に関する話題が相次いでいます。例えば、フィッチは9日に、中国の長期自国通貨建て格付けを「AAマイナス」から「Aプラス」に一段階引き下げたほか、ムーディーズは先週16日に、格付けそのものは「Aa3」に据え置いたものの、見通しについては「ポジティブ」から「安定的」に引き下げています。ちなみに、中国の格付けが引き下げられるのは1999年以来です。

中国には審計署という、政府機関や国有企業の財務収支の検査を行う機関があるのですが、そこのトップが中国の債務残高は2012年末時点の推計で、最大で18兆元であると言及しています。この額は対GDP比で35%ぐらいであり、財政問題で揺れている欧州の懸念国や日本、米国などからすれば、取り立てて心配する必要のないレベルです。にもかかわらず、フィッチやムーディーズが中国の格付けを見直したのは、地方政府の債務問題が顕在化し、中国経済の悪化へと波及する恐れがあるというのがその理由になります。

実は、「中国地方政府の債務がいずれ問題になる」という懸念は今に始まったわけではありません。ここにきて、再びこの問題にスポットライトが当たったのは、最近の経済指標などから、中国の景気回復が冴えない状況となっていることや、2016年までの今後3年間に地方政府が銀行から受けた融資の返済期限が集中しているためです。

話を遡ると、リーマンショック直後の2008年11月に、中国は4兆元の景気対策を打ち出しました。細かい内容についてはここでは触れませんが、対策のメインは地方のインフラ建設・整備などのプロジェクトでした。ただ、中央政府が4兆元の資金をすべて供給したわけではなく、各地方政府が自前で資金調達をしなければなりませんでした。

当時の地方政府は、地方債を直接発行して資金を調達することができないルールだったため、傘下に「平台(プラットフォーム、=LGFV)」と呼ばれる特別目的会社を作り、この平台が債券を発行したり、銀行からの融資受けるなど、間接的な資金調達機関の役割を果たしました。これによって、資金の流れが複雑かつ不明瞭となり、中央政府もその実態が把握しきれないという状況となりました。

そもそも、地方は税収が少なく、不動産売買で歳入を賄っている地域も多かったため、4兆元対策から約1年が経過したあたりから、身の丈以上の資金調達をしている地方政府の債務返済能力が指摘され始め、中央当局も実態調査に乗り出し、2011年には平台のブラックリストも作成しています。

ただ、「上に政策あれば、下に対策あり」で、地方政府の資金調達経路はますます複雑化していきました。最近のキーワードである、「シャドーバンキング」や「理財商品」などはこうした資金調達経路の一例です。一応、2010年末の地方政府の債務残高は10兆7,000億元というのが公的な目安となっていますが、本当にこの数字が正しいのかは不明です。

先程、2012年末の中国の財務残高が最大18兆元という数字が出てきました。なお、2012年末の中国の国債残高(中央政府の債務)は8兆2,700億元です。ざっくりした計算になりますが、18兆元から差し引いた残りである9兆7,300億元が地方政府の債務残高と考えることができます。であるならば、2010年の地方政府の債務残高(10兆7,000億元)から2年間で1兆元近くも残高を激減させたことになりますが、この数字に対する信頼度も微妙です。

このように、中国財政問題の本質は、その実態が把握しきれていないことや、中央政府がコントロールできるのかという不安にあります。確かに、この問題が中国経済にとって中長期的なリスク要因ではありますが、3月に平台に対する銀行融資の規制強化案をまとめるなど、中央政府は立て続けに手を打っているほか、中央政府や共産党が保有する資産規模は想定される地方政府の債務規模をはるかに凌駕していると言われているため、今すぐ問題が顕在化するという可能性は低いと見て良いと思います。

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