イタリア総選挙について
今週の国内株市場は、先週末の日米首脳会談を終え、TPP交渉参加に向けて一歩前進したことや、日銀の人事候補がほぼ固まったことなどを受けて、一段高でスタートしました。25日の日経平均終値は約4年5カ月ぶりとなる水準(1万1,662円)を回復したものの、その後は2日にわたって大きく下落する展開となりました。相場の明るいムードに水を差したのはイタリアの総選挙です。
24日から25日にかけて行われたイタリア総選挙は、大勢がほぼ判明した時点(開票率99.9%)で、下院はベルサニ氏が率いる中道左派(モンティ前首相の緊縮財政・改革路線を継続)が議席の過半数を確保する一方、上院については、反緊縮財政路線のベルルスコーニ氏が率いる中道右派や、ユーロ圏離脱の是非を問う国民投票などを主張するグリッロ氏が率いる「五つ星運動」が予想以上に票を伸ばし、どの政党も過半数を獲得できないという状況です。
今回の選挙結果からは、モンティ前首相がこれまで推し進めてきた緊縮財政路線に対して、思った以上に拒否反応を示すイタリア国民が多かったことが窺えます。また、政権与党と関係の深い金融機関(モンテパスキ銀行)の損失隠し問題が、選挙前になって明るみになったこともマイナス要因になったと思われます。とはいえ、モンティ路線によって、イタリアの財政赤字が縮小し、経常収支については黒字化も視野に入るなど、着実に成果を挙げてきたのも事実です。そもそも、ベルルスコーニ政権下でイタリアの財政不安が高まったわけですから、再び中道右派への票が集まったことは少し皮肉な感じがします。
選挙直後の金融市場では、為替市場でのユーロ安や各国の株価下落などの反応を見せましたが、今のところ本格的なリスク回避モードではなさそうです。イタリア10年国債も選挙後に売られて利回りが上昇しましたが、4%台の後半で上げ止まり、節目の5%には達していません(ちなみに、欧州の財政・債務問題が落ち着きはじめる前(8月下旬)の利回りは6%弱でした)。さらに、27日に実施されたイタリア国債の入札(10年物と5年物)が発行予定額を上回る応札を集めたため、安心感が広がり、国内外の株式市場は堅調さを取り戻しています。
ただし、現状は「警戒しながらも、ひとまずは様子見」という認識をした方が良さそうです。イタリアでは、上下院の両方で同一の党が過半数を獲得することが政権発足に必要なため、現時点で安定政権の樹立が困難な状況です。これから連立政権にむけた交渉が始まりますが、どのような連立になるかが見通せないほか、不調に終われば再選挙というシナリオも浮上しています。政治不在の長期化や、これまで積み重ねてきた緊縮財政・改革路線の後退、不安が他の欧州懸念国へ飛び火するなど、状況次第ではリスク回避が強く意識される可能性には注意が必要です。
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