ZenmuTech(338A)秘密分散技術の用途開発と秘密計算ビジネスの立ち上げで成長目指す

2025/04/01

秘密分散技術を活用したPC データの保護等のデータセキュリティサービスを提供
秘密分散技術の用途開発と秘密計算ビジネスの立ち上げで成長目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦

◆ 秘密分散技術を活用したデータセキュリティサービスを提供
ZenmuTech(以下、同社)は、安心・安全なデータセキュリティを提供するため、自社開発した秘密分散技術「ZENMU-AONT」を活用した秘密分散ソリューションの展開及びZENMU-AONT開発のノウハウを生かして開発した秘密計算ソリューション「QueryAhead」を利用し、受託研究等を通じたサービスの事業化に向けた開発を進めている。

同社の秘密分散技術ZENMU-AONTのAONTはAll or Nothing Transformの略で、データを分散片に分割して暗号化し、意味のない情報として異なる場所に分散保存し、全ての分散片が揃わないと元のデータが復元されないという技術である。データを暗号化や秘密鍵によって保護するのではなく、データを分割して無意味化することでデータセキュリティを達成する技術である。

秘密計算とは、秘密分散をしてデータを秘匿した状態で計算や分析を行う技術である。データを秘匿しながら、それらのデータに基づく計算結果や分析結果を得られるというメリットがある。

同社は情報セキュリティ事業の単一セグメントであるが、売上高を秘密分散ビジネス、秘密計算ビジネス、その他の3つに分けて開示している。

24/12期の売上高構成比は、秘密分散ビジネスが78.9%、秘密計算ビジネスが18.5%、その他が2.6%であった(図表1)。その他は、同社の創業時から行っている、シンクライアント注1向けのWindows Embedded OSのカスタマイズ、シンクライアントの既存顧客向けの更新時や追加導入時のコンサルティング等の売上高である。

◆ 秘密分散ビジネス
秘密分散ビジネスの主要サービスは、PCの情報漏洩対策ソリューション「ZENMU Virtual Drive」と、秘密分散ソフトウェア開発キット「ZENMU Engine」の2つである。秘密分散ビジネスの売上高の9割以上をZENMU Virtual Drive関連が占めている。

1) ZENMU Virtual Drive
ZENMU Virtual Driveは、秘密分散技術を利用してPC上のデータ保護を行うソフトウェアである。データをPCの内蔵ドライブとUSB、スマートフォン等に分散保存するZENMU for PC(以下、ZPC)と、PCの内蔵ドライブとクラウド上に分散保存するZENMU Virtual Drive Enterprise Edition(以下、ZEE)等からなる。ZEEはZPCの後継サービスで21年11月に提供が開始されたが、現在はZEEが売上高の中心となっている。シンクタンク、コンサルティング会社、金融機関、ITベンダー等での利用が多い。

販売方法は、ライセンスのみの一括販売、ライセンス利用に伴う保守契約、ライセンス契約と保守契約、アップデート対応が一体となったサブスクリプション契約の3つがある。24/12期末の、保守契約とサブスクリプション契約合計のPCの台数は、99,317台となっている(図表2)。ライセンスの一括販売を行った後に、その後の保守契約を結ぶことも多い。主力のZEEのサブスクリプション契約の料金は、ユーザー価格ベースでPC1台当たり月額1,800円(税別)となっている。

販売チャネルは一部で直接販売もあるが、大半はシステム開発会社等の販売代理店を通じた販売となっている。

2) ZENMU Engine
ZENMU Engineは、ZENMU-AONTの秘密分散技術を顧客の製品やサービスに組み込むための製品(ライブラリ)であり、ソフトウェア開発キットとして提供している。収益は、ソフトウェア開発キットのライセンス収入と保守契約に基づく保守料のほか、ZENMU Engineを組み込んだOEM商品の開発に関するコンサルティング料やOEM商品の収益に応じたロイヤルティである。

ZENMU Engineの提供事例としては、NFT注2や暗号資産等を購入、保存できるデジタルウォレットの保護のための秘密鍵の分散保管向けや、防犯・監視カメラに組み込んで、個人情報を含む映像データの分散保管による、漏洩や盗聴、窃取の防止等での利用がある。防犯・監視カメラ向けのサービスは、日立システムズエンジニアリングサービス(横浜市西区)から「秘密分散フォービデオ」として提供されている。

◆ 秘密計算ビジネス
同社は、秘密分散技術を応用し、産業技術総合研究所(東京都千代田区)との共同研究を基に秘密計算ソリューションQueryAheadを開発した。現在は、秘密計算を適用できる分野やアプリケーションを検証している段階で、適用領域として、金融、製造・物流等のサプライチェーン、材料開発、ヘルスケア分野を主なターゲットに、サービスの事業化を目指すパートナーの開拓を進めている。

現状では売上高は、産業技術総合研究所による秘密計算の社会実装を行うための公募プロジェクトの受託によるものが殆どを占めている。

◆ 主要販売先
同社が開示している主要販売先の内、デロイトトーマツコーポレートソリューション(東京都千代田区)はZENMU Virtual Driveの直接販売先であり、産業技術総合研究所は、秘密計算ソリューションの社会実装プロジェクトの受託先である(図表3)。

日立製作所(6501東証プライム)、日立システムズエンジニアリングサービス、野村総合研究所(4307東証プライム)はZENMU Virtual Driveの販売代理店、及びZENMU Engineの提供先である。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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