「何となく」強いユーロ
堅調な国内株市場を支援している為替の円安傾向が続いています。円安トレンドが顕著になったのは昨年11月以降ですが、これまでの動きを振り返ってみると、ユーロが11月13日の100.30円台から23%以上、米ドルが11月3日の79.00円台から15%以上の円安が進行しており、ユーロと米ドルを比較すると、対ユーロでの円安基調が強いことが分かります。
今週に入ってからも、対ユーロは1ユーロ=123.80円台と、約1年9カ月ぶりの水準となる場面を見せました。その背景には、リスクテイクのムードが拡大したことでユーロが買い戻されている動きがあります。
リスク状況の目安のひとつになるのが債券市場ですが、スペインとギリシャの10年国債利回りは、昨年9月5日のECB理事会でOMT(国債買い入れプログラム)が公表されて以降、堅調な米国経済や中国景気の底入れ、日本の衆院解散総選挙による新政権への期待などの追い風も加わり、順調に低下傾向を辿ってきました。
9月のあたまには危険水域とされる7%近辺に位置していたスペイン10年債利回りは、現在5%台前半で推移しているほか、支援の再開が決まったギリシャについては、22%以上もあった利回りが現在10%台前半と劇的に低下しており、債券市場は落ち着きを取り戻しています。
また、ECB(欧州中央銀行)が2011年12月に実施した3年物資金供給オペ(LTRO)の繰り上げ返済が1月30日から始まったのですが、先日(25日)にECBが発表したところによると、資金供給を受けた金融機関(523)のうち、約53%にあたる278の金融機関が繰り上げ返済に参加するほか、合計の返済金額(1,372億ユーロ)も供給資金総額の約28%相当となり、思った以上に返済参加者と金額が多いと受け止められたことも、ユーロ買いに拍車をかけました。
これは、欧州の金融システム不安が後退し、銀行などが資金調達をしやすくなっていることと、早期返済による資金吸収により、ECBのバランスシートが縮小することを意味します。とりわけ、日米の中央銀行が金融緩和策を続ける(バランスシートが拡大する)のと反対の動きのため、ユーロが買われやすくなるというわけです。ユーロは対円だけでなく、対米ドルでも上昇しています。最近は欧州を中心に、直近の円安傾向を牽制する要人発言が目立つようになってきましたが、実際のところは「ユーロ高による円安」側面の方が強いと言えます。
ただし、ユーロ高の持続性には注意が必要です。何となく「楽観的なムード」によって演出されている面が大きいためです。そもそも欧州の財政・債務問題の解決に向けた取り組みはこれからが本番ですし、さらに、比較的堅調な経済情勢を背景にドルが買われている米国と異なり、欧州経済は2012年第4四半期のGDPがマイナス成長の見込みとなっているほか、先日発表された製造業PMIも17ヶ月連続で節目の50を下回っているなど、決して良好ではなく、継続的な景気回復が強く見込まれているわけではありません。そのため、最近のユーロ高の影響で輸出競争力の低下が意識されやすく、欧州景気の悪化につながるという懸念もあります。
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