政治改革から経済構造改革への進展が中国の課題
尖閣諸島をめぐる問題から、「チャイナリスク」という言葉が頻繁に飛び交うようになりました。過去に遡れば、2005年の小泉政権時代の反日運動が記憶に新しいですが、こうした外交問題以外にも、2008年の「毒入り餃子問題」でスーパーの棚から中国製冷凍食品が姿を消した時期があったことや、偽ブランド製品に代表される商標登録・知的財産権の問題なども「チャイナリスク」であり、中国と関わっていく上で注意しなければならないカントリーリスク全般を指しています。
国際社会や世界経済における中国の存在感が大きくなっている現在、主に政治面と経済面での「チャイナリスク」の注目が高まっています。
政治面で言えば、今年は中国の指導部が交代します。先日、その指導部メンバーである「政治局常務委員」を決める中国共産党の党大会が11月8日に開かれるとの発表がありました。通例であれば、その顔ぶれもほぼ内定しているのですが、現時点でメンバー入りが確定している習金平氏と李克強氏以外は絞りきれていないという、ちょっとした異常事態になっています。さらに、この常務委員のメンバーを9名から7名に減らすという案もあり、裏で派閥間による権力争いのニオイすら感じられます。実際に、次期メンバー入りが確実視されていた元重慶市トップの薄煕来氏が失脚しており、この手の想像や思惑に事欠きません。
かつては鄧小平氏のような「絶対的カリスマ」を中心に政治が動いていましたが、現在は指導部メンバー内での駆け引きや調整で動いており、今後は政権基盤の不安定さや、意思決定のスピードが懸念されます。新指導部が政権基盤の維持のために日本に対してさらに強硬な姿勢を示してくる可能性がないとも言えません。
また、経済面では周知の通り、景気の減速傾向が続いています。先日発表された、中国の9月製造業購買担当者景況指数(PMI)(HSBC版とCFLP版)がともに5ヶ月ぶりに改善し、景気減速が底入れしたとの見方が出てきているものの、景気の善し悪しを判断する節目の数値(50)は下回っており、依然として予断を許さない状況です。なお、今月の18日には、7-9月期のGDPが発表される予定となっています。
もちろん、中国当局もこの状況を放置しているわけではなく、6月と7月に2ヵ月連続の利下げや、鉄道や地下鉄、道路などインフラ整備を中心とする公共プロジェクトの前倒し実行などの対策を打っています。このほか、地方政府も投資を主体に次々に景気対策を発表しており、今後3~4年間の投資規模は12兆元(約146兆4000億円)を超えると言われ、短期的には中国経済は持ち直すと思われます。
ただし、これは2008年以降に実施された大規模な投資主導の経済対策の繰り返しです。現在もその対応に苦慮している、不動産バブルやインフレ、地方政府の債務急増、格差拡大などの問題をさらに深刻化させる危険を孕んでいるほか、2011年の12次五ヵ年計画で決定された、「外需・投資主体による急成長から、内需・消費主体の安定的成長」への経済構造改革の流れに逆行する動きでもあります。
本来であれば、社会保障制度の整備や税制改革、規制緩和などの政策を通じて、所得の再分配や可処分所得を増やして内需・消費拡大を促すことが中国の中長期的な経済成長には必要なのですが、それがあまり進展していないため、現在の中国経済を牽引もしくは支える手段が投資しかないことの裏返しとも言えます。
党大会後の新指導部がどこまで政治改革・経済構造改革に踏み込めるかが、これからの中国の課題となります。
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