(6250:東証1部) やまびこ 一般産業用機械好調 ロボット芝刈り機にも注目
今回のポイント |
・18年12月期の売上高は前期比微増の1,180億円。小型屋外作業機械が低調だった国内は、一般産業用機械が伸長し増収。海外はドル安円高の影響もあり前年並み。米州は、小型屋外作業機械の販売が減少した一方、一般産業用機械が大きく伸長し、農業用管理機械も堅調に推移。欧州はロシアが低調で前年並み。中国における農業用管理機械、豪州の小型屋外作業機械は堅調だった。営業利益は同5.4%増の62億円。一時的な原価率の上昇などがあったが、販売数量の増加や販売管理費の減少などによる利益の押し上げがあり増益となった。売上はほぼ計画通りだったものの利益は未達であった。・19年12月期の売上高は前期比5.9%増の1,250億円の予想。国内が堅調。海外も北米及び欧州の回復を見込んでいる。営業利益は同3.3%増の65億円の予想。研究開発費の増加や北米ロボット事業の開始に伴う基盤強化投資など販管費増に加え、米中通商問題による関税の影響や米国の人件費増加などの下押し要因もあるが、販売数量の増加や生産効率の改善により増益を見込む。為替の前提は、1USD=110円(前期110円)、1ユーロ=125円(同131円)。配当は、普通配当35円/株の予定。予想配当性向は32.1%。
・いよいよ「中期経営計画2019」の最終年度に入った。残念ながら当初計画の営業利益88億円の達成は難しくなったが、小型屋外作業機械はプロ向け製品の開発・投入に注力するなど、海外中心に需要を取り込むとともに、国内も一般産業用機械が高い伸びを見込むなど、トップラインを伸ばす余地は大きいと会社側は考えている。今期の売上高を1,250億円からどれだけ上積みを行えるのか、次の中計の基礎固めという意味でも重要な1年となろう。中期的には欧州で着実に実績を残してきたロボット芝刈機が、今期販売が始まる巨大な北米市場で、どんなスピードで浸透していくのかを大いに注目したい。 |
会社概要 |
小型屋外作業機械(刈払機、チェンソーなど)、農業用管理機械(防除機、畦草刈機など)、一般産業用機械(発電機、溶接機など)の3事業における各種製品の開発・製造・販売をグローバルに展開。海外売上比率は約60%。小型屋外作業機械では国内首位、米州上位と高いシェアを有する。独自の生産技術、豊富なラインアップ、充実したテクニカルサポート体制等が強み。【1-1 沿革】
同社は、国内で農業機械、グローバルで小型屋外作業機械を扱っていた株式会社共立(東・名・阪一部上場)と、グローバルで小型屋外作業機械及び一般産業用機械を扱っていた新ダイワ工業株式会社(東証2部上場)の2社が2008年12月に設立した共同持株会社「株式会社やまびこ」が、2009年10月に両社を吸収合併して事業会社化した会社である。 株式会社共立は、1947年、東京で創立された株式会社共立農機を前身とし、農業機械事業において「国産初のスピードスプレーヤ(農薬散布機)」、小型屋外作業機械事業において「国内初の背負動力刈払機」、「世界初の手持ち式パワーブロワ」を開発するなど、両事業におけるリーディング企業であった。また、創業時より小型屋外作業機械のエンジン自社開発に注力し、合併前の2008年のエンジン累計生産台数は4,000万台に上っていた。 一方、新ダイワ工業株式会社は1952年、広島で創業した浅本精機製作所が前身。小型屋外作業機械事業において「国産初の電動チェンソー」を開発したほか、一般産業用機械事業においてエンジン発電機、エンジン溶接機などを製造販売。また、世界初の混合燃料使用の4サイクルエンジンを開発するなど、高い技術開発力を特長としていた。 1990年代後半に入り温室効果ガスを要因とする地球温暖化問題への関心が高まるとともに、欧米、特にアメリカでエンジンの排出ガス規制が強化され、新基準をクリアするための研究開発費が増大。これに対応できない中堅・小型企業を対象として小型屋外作業機械市場において2000年代に入りグローバル規模での業界再編が急速に進行した。加えて、新興国企業による安値攻勢や顧客ニーズの多様化などにより、事業環境は一段と不透明なものとなっていた。 社名「やまびこ」は、山の神「山彦」を由来としており、「人と自然と未来をつなぐ」を経営理念とし、自然と環境の育成・整備への貢献を掲げる同社の姿勢を表している。 【1-2 経営理念など】 これに加えて、行動指針を補完し、具体的な対応方法を示した14項目からなる行動指針細目を制定し、企業理念に則った事業活動が行われるように努めている。 ≪永尾 慶昭社長プロフィール≫ ほぼ技術畑を一貫して歩んできた後、2006年2月に米国の子会社エコー・インコーポレイテッドの代表取締役に就任。米国における排出ガス規制の状況とその対応、そうした中でユーザーの満足度をどうすれば高められるかに注力。また共立、新ダイワ工業の合併時には現地販売ルートの整理をスピーディーかつドラスティックに進めるなど、ご自身でも「仕事の幅が広がる重要なステップであった。」と振り返る。 【1-3 市場環境】 小型屋外作業機械でグローバルに展開するメーカーとしては、欧州(ドイツ・スウェーデン)に2社存在すると会社側では認識している。 【1-4 事業内容】 『小型屋外作業機械事業』 (ガソリンエンジンの仕組み) ガソリンエンジンとは、基本的に以下の4つのステップを経てガソリンが燃焼する力でピストンを押し下げて動力を発生させるもの。 ピストンの往復運動は、クランクシャフトと呼ばれる部品によって回転運動に変換され、自動車の車軸やチェンソーの回転軸を回転させる。 「2ストローク・エンジン」 「4ストローク・エンジン」 4ストローク・エンジンは、吸気と排気をコントロールしやすいといったメリットがある反面、吸・排気バルブをシリンダーヘッド部に設置するため、シリンダーの胴体に設置されるポートから吸・排気を行う2ストロークに比べ構造が複雑になる。また、そのため重量も重くなる。 これに対し、2ストローク・エンジンは、混合気の吹き抜けやピストン運動を円滑にするために用いられるエンジンオイルが燃料と一緒に燃焼する割合が4ストローク・エンジンに比べると多いため、排気ガス中に有害物質が多くなるといった面があるものの、構造がシンプルで部品数も少ないため小型・軽量化が可能で、同じ理由からオーバーホールも容易といったメリットがあり、小型屋外作業機械には2ストローク・エンジンが最適である。 『農業用管理機械事業』 『一般産業用機械事業』 新ダイワ工業が創業時から蓄積してきたAC(交流)モータ開発技術を進化、発展させた発電体設計技術や、電子制御技術、防音技術などが同事業における技術的な強みである。 (アクセサリや部品) 2.ブランド 3.開発体制 排出ガス規制は今後もさらに厳しくなることが予想されるため、最重点課題である。 4.生産体制 5.販売ルート&販売方法 <国内市場> やまびこジャパンが販売代理店、全農(全国農業協同組合連合会)、ホームセンター、建設機械レンタル会社等に同社製品等を販売し、エンドユーザーである農林業家、建設・土木・鉄工業者、緑地管理業者などに供給される。 <北米市場> ※ホームデポ(The Home Depot) ホームデポでは、GOOD、BETTER、BESTの区分で品質ごとに分類されており、高品質なBESTとして製品を供給しているのは同社のみである。これが、同社製品が北米市場で高く評価されている証左の一つとなっている。 中南米市場においては子会社エコー・インコーポレイテッドが各国代理店に販売し、その後販売店を通じてエンドユーザーに供給される。 海外の販売店では、ブランド別に製品を展示しており、エンドユーザーのニーズを聞きながら販売員が対面販売を行っている。 【1-5 特長と強み】 <具体例①:鉄めっき> 同社では、環境負荷低減の観点などから1978年より「鉄めっき」に取り組んでいる。 <具体例②:放電加工> ダイカスト鋳造(※)により「壁」を形成する事は可能だったが、その壁に混合ガスを燃焼室に導くための横穴を開ける必要があり、ダイカスト鋳造では横穴を開ける事は出来ず、また狭い箇所であるため切削加工も困難であった。 (※)ダイカスト鋳造 (※)放電加工 同社はこれらの技術を始めとした「高度なモノ作り力」によって、排出ガス規制対応以外にも、軽量化、高耐久性、更なるコスト削減など様々なニーズに対応し、「排出ガス規制対応・軽量化・高耐久性2ストローク・エンジン」の開発・量産に成功している。 ②各事業固有の研究・開発力 ③豊富なラインアップ・販売ネットワークおよび国内サービスネットワークの拡大 ④充実したテクニカルサポート体制 ⑤高い製品シェア 【1-6 ROE分析】 今期の売上高当期純利益率は前期とほぼ同水準の3.60%の予想。レバレッジが低下傾向にあるが、8%近辺のROEが見込まれる。 |
2018年12月期決算概要 |
*対前期比は、前17年12月期に行った決算期変更に伴い前期が今18年12月期と同様の対象期間及び対象範囲であったと仮定して調整した売上・利益(未監査)に対する比較。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。微増収、販売数量増などで営業増益 売上高は前期比微増の1,180億円。国内は小型屋外作業機械が低調、農業用管理機械は前年並みだったが一般産業用機械が伸長し増収。海外はドル安円高の影響もあり前年並み。米州は、小型屋外作業機械の販売が減少した一方、一般産業用機械が大きく伸長し、農業用管理機械も堅調に推移。欧州はロシアが低調で前年並み。中国における農業用管理機械、豪州の小型屋外作業機械は堅調だった。 営業利益は同5.4%増の62億円。一時的な原価率の上昇などがあったが、販売数量の増加や販売管理費の減少などによる利益の押し上げがあり増益となった。 売上はほぼ計画通りだったものの利益は未達であった。
(国内) (海外)
(国内) (海外)
(国内) (海外)
除雪機販売が伸長したことなどにより増収。 売上債権の増加等で流動資産は前期末比13億円増加。投資その他の資産の減少で固定資産は同27億円の減少。資産合計は同13億円減少の997億円となった。 17/12期は9カ月決算のため単純な増減比較はできないが、税金等調整前当期純利益の減少、仕入債務の減少などで営業CF、フリーCFのプラス幅は縮小。キャッシュポジションは低下した。 (4)トピックス ②生産性・収益性向上に関する取組み |
2019年12月期業績予想 |
国内堅調、海外が回復し増収増益。
売上高は前期比5.9%増の1,250億円の予想。国内が堅調。海外も北米及び欧州の回復を見込んでいる。 営業利益は同3.3%増の65億円の予想。米中通商問題による関税の影響や米国の人件費増加などに加え、研究開発費の増加や北米ロボット事業の開始に伴う基盤強化投資など販管費増の下押し要因もあるが、販売数量の増加や生産効率の改善により増益を見込む。 為替の前提は、1USD=110円(前期110円)、1ユーロ=125円(同131円)。 配当は、普通配当35円/株の予定。予想配当性向は32.1%。 |
中期経営計画2019 ~主力市場における取組~ |
2019年12月期「売上高 1,250億円」達成に向けた各地域別市場における主要施策および足元の取り組みは以下のような状況となっている。(1)北米市場
2019年は小型屋外作業機械事業でエンジン製品市場の回復を見込んでいる。 主力の代理店およびホームデポルートの売上拡大によるブランド力とシェアの更なる向上を目指している。 (各種取り組み) (2)欧州市場 (各種取り組み) (3)日本市場 (各種取り組み) (4)一般産業用機械 小型屋外作業機械に関しては、2018年比で3市場とも増収を見込んでいる。 19年12月期の売上高予想は1,250億円と据え置いたが、営業利益に関しては88億円から65億円に修正した。 前々期、前期と未消化だった設備投資は今期計画を増額修正。生産性向上、更なる成長のために継続的かつ的確に実行していく。 |
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<参考1:「中期経営計画2019」について> |
「中期経営計画2019」概要
①基本方針・ビジョン 中長期的にどのような会社を目指していくべきか、より具体的なイメージを共有するために2つのビジョンを掲げた。 また、「中期経営計画2019」を前中期経営計画期間で実行した積極投資の効果を具現化する期間と位置付けている。 ②重点施策 ③株主還元について |
<参考2:コーポレートガバナンスについて> |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年12月26日 <基本的な考え方> 当社の取締役会は社外取締役2名を含む7名の取締役で構成され、当社グループの経営方針、経営戦略およびグループ会社の経営指導・監督に関わる重要な意思決定を行います。取締役は取締役会において、他の取締役の職務を監視、監督するほか、自己の職務の執行状況について取締役会に定例的に報告します。また、取締役会の決定事項を的確かつ迅速に実践するため、経営戦略会議において十分な審議を行います。 当社は監査役制度を採用し、常勤監査役2名と社外監査役2名の計4名で監査役会を構成します。 |