堅調な米株市場のウラで失われる「ソフトパワー」
今週の国内株市場ですが、これまでのところ、日経平均が4万円に上値を抑えられる格好で、少し弱含みでもみ合う展開が続いています。
米トランプ政権が通告した新たな相互関税率の影響と先行きの交渉が見通せない中、20日に控える参議院選挙の投開票を前に、積極的に動きづらくなっており、利益確定売りに押されている様子がうかがえます。
それでも、相場が崩れずに済んでいるのは、米国株市場が再び息を吹き返していることが寄与しています。NYダウとS&P500は最高値圏での推移を保っているほか、ナスダック総合は9日の取引で最高値を更新しています。
あらためて、ここ2~3週間の米国株市場の状況を確認すると、多くの好条件と前向きな解釈に支えられています。具体的には、堅調な米国経済をはじめ、インフレも抑制的など、懸念されていた米トランプ政権の関税政策の影響がまだ表面化していないこと、米FRBの利下げ観測が高まっていること、減税・歳出法案(「ひとつの大きくて美しい法案」)が成立したこと、関税交渉でベトナムと合意したことによる進展期待が浮上してきたこと、そして、エヌビディアなどAI需要の強さを背景に力強く上昇している銘柄が米国株市場に存在していることなどが挙げられます。
とりわけ、「買える」銘柄の存在によって、米国株市場の強さが印象付けられていますが、今後も上値を伸ばせるかは、まもなく本格化する決算シーズンで答え合わせを迎えることになります。
その一方で、米国市場に対する懸念が埋もれてしまっている点には要注意です。
米トランプ政権の関税政策の影響は、まだ米国の経済指標に反映されていませんが、実際のところ、相手国の企業が値下げ等で負担している段階であり、限界がくればいずれ価格に反映されて、米国民が負担することになる可能性があるため、今後の消費や物価関連の経済指標の動向をウォッチしていくことになります。
また、今週に入り、米トランプ政権が続々と新たな相互関税率を各国に通達しています。7日には日本を含む14カ国、9日には8カ国の税率が公表されました。今回通達された税率は8月1日から適用されますが、それまでに交渉を重ねて、できるだけ多くの譲歩を引き出そうとする狙いが見受けられます。
しかし、米国の関税政策には、「商取引の不公平さを解消する」という大義名分があっても、そもそも根拠に乏しい税率を一方的に押し付けてきたは米国であり、相手国とのあいだの論点が明確でないため、交渉が上手くいくのは難しく、仮に合意に至ったとしても、それは「関税率の引き下げのために、米国の(理不尽な)要求を呑んだだけ」という構図になります。とりわけブラジルの関税率は当初(4月)の10%から50%に引き上げられましたが、米国のブラジル貿易は黒字であり、50%の数字の背後には政治的な要求の側面が強くなっています。
今後も、何らかの形で関税交渉は進展していくと思われますが、そのウラでは、米国に対するリスペクトや信頼感といった「ソフトパワー」が着実に失われているため、中長期的に「米国離れ」が進行してしまうリスクについても意識しておく必要がありそうです。

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