向こう2~3年、円安か?─東京オリンピック需要の反動減で

2017/07/31

 

「2019年の景気減速を日銀は乗り切れるか?」との懸念等が円安圧力になるとみています。

日銀だけ緩和縮小できず円安進行か

このところ日本経済は、世界的な景気拡大による輸出の増加等もあり、明るさを一段と増しつつあります。しかし市場の一部では早くも、東京オリンピック(2020年)や消費増税(2019年10月)等を意識して「2019年の景気減速を日銀は乗り切れるか?」と懸念する声が聞かれ始めました。景気減速への対応を迫られ「日銀は緩和策をいつまでも縮小できない」一方で、米国やドイツ等では景気拡大で市場金利上昇が見込まれることから、内外金利差が拡大し「円安に歯止めがかからなくなる」と身構える市場参加者も出てきました。

米欧で進む緩和縮小への動き

きっかけは、日銀の展望レポート7月号です。GDP成長率見通し(政策委員の中央値)が2019年度は+0.7%とされました。2017年度(+1.8%)や2018年度(+1.4%)と比べ、大きな減速です。実は3ヵ月前の展望レポート4月号から既に2019年度見通し公表が始まっており、その時すでに+0.7%でした。この3ヵ月間、米欧では好調な景気拡大で緩和縮小の動きが目立ったことから、対照的に日本の先行き景気減速が改めて市場で意識された形です。FRB(米連邦準備制度理事会)は6月の利上げやバランスシート縮小策の具体化が、ECB(欧州中央銀行)は「緩和縮小方向で微修正する」と市場が受け止めたドラギ総裁発言(6月27日)等がありました。

消費増税は再び先送りの公算

景気減速の理由を、展望レポート7月号は「2019年度は、設備投資の循環的な減速に加え、消費税率引き上げの影響もあって成長ペースは鈍化する」とし、2つの要因を指摘しました。このうち消費増税に関しては、再度の先送り観測もあり、景気マイナス要因にならない可能性があります。市場ではまだ3割程度の先送り予想です(ESPフォーキャスト調査、7月10日)。しかし、「骨太の方針」(6月9日閣議決定)から消費増税の文言が消えたこともあり、市場では「財政再建に消極的な安倍政権は、消費増税の先送りを繰り返す公算が高い」との声が聞かれます。

オリンピック需要の反動減には要警戒

もう一つの要因の「設備投資の循環的な減速」に関しては、「オリンピック関連投資の一巡の影響も加わり、減速する可能性が高い」との日銀の判断です。オリンピック関連の建設投資については、「会場設備など直接的な需要だけでなく、民間ホテルの新築・増築等や都心の再開発、商業施設の建設や交通インフラの整備など間接的な需要も含まれる」とし、これら建設関連投資は「2017~2018年頃にかけて大きく増加したあと、2020年頃にかけてピークアウトしていくと予想される」との分析です(注)。とりわけ「建設投資のブーム・アンド・バストによる景気の大きな振幅を回避するには規制緩和等が大切」との説明です。ブームは「活況」、バストは「崩壊」ですので、前回の東京オリンピックによる「昭和40年不況」(別名「五輪後不況」)を連想する市場参加者も少なくないとみられます。

(注)日銀「2020年東京オリンピックの経済効果」2015年12月。

2~3年後、政策金利3%の米国と0%付近の日本

米国では、少なくとも向こう2~3年、景気拡大が続きそうです。IMF(国際通貨基金)は向こう2~3年、概ね2%超の米国景気拡大を見込んでいます(図表参照)。ユーロ圏でも景気拡大が続く見通しです。大きな景気減速を見込む日本とは対照的です。

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米国景気拡大を下支えするのは、慎重なFRBの利上げ姿勢です。前回の利上げ局面(2004~2006年)では年に8回超の利上げペースでしたが、今回は同じ0.25%ポイント幅で年に3回の利上げペースとかなり慎重です。2~3年後には政策金利の3%付近への引き上げ完了が見込まれる一方、「五輪後不況」対応を迫られる日銀は利上げできず、日米金利差は拡大し、円安が進行する事態が想定されます。

明治安田アセットマネジメント株式会社
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かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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