円安125円が視野に入る─トランプ米新大統領の政策期待等で

2016/11/16

 

トランプ新政権の前半、少なくとも2年間程度は、円安の流れが定着するとみています。

 

チャートは円安への『潮目の変化』を示唆

米ドルの対円為替レートは、過去30年間という超長期では、右肩下がりの『円高トレンド』が“概ね”続いてきました(図表参照)。“概ね”とは、約4年前、第二次安倍政権の経済政策「アベノミクス」をきっかけに1米ドル=80円付近から始まった『アベノミクス円安』の流れが、この 『円高トレンド』を一時的に中断した形となったからです。昨夏には1米ドル=125円付近となった後、本年入り後は一時100円付近となり、 『円高トレンド』に戻っていました。

ところが米国大統領選挙の結果が判明した先週末(11月10-11日)にかけて、再び超長期の 『円高トレンド』 の(105円付近とみられる)ドル上値抵抗線を上方に抜け、ドル高、円安の動きに弾みがついています。外為市場では、潮目が変化しつつあるようです。昨年夏の「1米ドル=125円の円安水準も視野に入ってきた」と言えそうです。

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ファンダメンタルズの裏付けを伴う円安転換 

チャートだけで相場の方向性を語ることは危険ですので、ファンダメンタルズを確認したいと思います。トランプ氏は、①大幅減税や、②大規模な財政支出増、③規制緩和策等を公約に、「強い米国の復活」を唱え勝利しました。これを受け、米国長期金利が急速に上昇し始めています。市場では、先行きの通商政策や移民政策への不安よりも、トランプ氏と類似点が多いレーガン大統領(1981年1月から2期8年間)の経済政策とその帰結への連想の方がより強いようです(上述の公約②は、レーガン政権の軍事費拡大、トランプ氏のインフラ投資拡大という違いはありますが)。 当時、「レーガン政権の前半は金利高、ドル高が進行した」帰結への連想から、「トランプ新政権下でも、少なくとも当初2~3年は長期金利上昇、ひいてはドル高進行が進む」と市場で受け止められているようです。「ドル安政策を志向」との観測も一部あったトランプ氏ですが、市場で決まる金利上昇の圧力を抑えるのは難しそうです。

日本の低金利環境と国際競争力の低下懸念

一方、日本では、黒田総裁率いる日本銀行が「長期金利がゼロ%程度で推移するよう国債の買入れを行う」政策です。本来、市場で決まる長期金利を、中央銀行が操作対象にする、前代未聞とも言える政策に着手しています。日本銀行が異次元緩和の手綱を緩めない限り、日米金利差の拡大、ひいては円安が続くと見込まれます。

さらに将来的には、 『アベノミクスの第三の矢』の構造改革が「日本の国際競争力の向上につながらない」と市場に判断されてしまえば、 昨夏の1米ドル=125円を超える円安に歯止めがかからなくなる恐れも警戒されます。市場では、労働生産性向上、ひいては潜在成長率向上につながる(経営難に陥った企業向けの)「解雇規制等の緩和議論が避けられている」との見方も根強くあります(MYAM Market Report「1月以降の円高局面は終了──中長期的視点で通貨分散を」2016年10月13日)。

日米金利差の拡大が裏付けする「円安の持続性」

今後、米国の金利上昇が、トランプ新政権下での(規制緩和策等を通じた潜在成長率引き上げによる)「良い金利上昇」につながるのか、(財政赤字の急拡大によるインフレ懸念からの)「悪い金利上昇」につながるのか、市場は見極めようとしていくと思われます。「良い」「悪い」はともかく、米国の金利上昇傾向は少なくとも2年程度は続く可能性が出てきたことから、日米金利差の拡大観測を通じ、ドル高、円安の流れは定着しそうです。

レーガン政権の後半にはドル急落、大幅な円高に

 もっとも、忘れてはならないのは、レーガン政権の後半は「双子の赤字」(財政赤字と経常収支の赤字)に陥り、プラザ合意(1985年)で突如、ドル安政策に転換せざるを得なくなったことです。先行き、数年経過した後に、トランプ政権下でも同様の急激な円高となるリスクがある点には注意が必要と思われます。

【コラム】レーガン大統領とトランプ氏の類似点 

トランプ氏と同様、政界キャリアに乏しい、かつてハリウッド俳優であったレーガン大統領は、自信を喪失しかけていた国民に「強い米国の復活」を主張して大統領選に勝利しました。トランプ氏も「強い米国の復活」が持論です。また、70歳という高齢の大統領が誕生する点も共通です。
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かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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