ラクスル<4384> 18/7 期第 2 四半期に営業黒字に浮上し、今後の黒字定着を確認していく局面

2018/06/05

印刷 EC のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」を運営
18/7 期第 2 四半期に営業黒字に浮上し、今後の黒字定着を確認していく局面

業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 印刷 ECプラットフォーム「ラクスル」の運営が主力事業
ラクスル(以下、同社)は、業務の非効率性のある産業ごとのシェアリングプ ラットフォームを運営する企業である。現在は、印刷 EC 注のシェアリングプラ ットフォーム「ラクスル」のほか、物流のシェアリングプラットフォームの「ハコ ベル」を展開している。

同社の事業は、「ラクスル」の印刷事業と「ハコベル」の運送事業の 2 つの報 告セグメント、及びその他から構成される(図表1)。印刷事業には、印刷EC サービスに加え、印刷物の配布を行う集客支援サービスが含まれる。印刷 事業のうち、印刷 EC サービスが全体の売上の 80%強を占める主力事業と なっている。

◆ 印刷事業~印刷 EC サービス
同社の主力プラットフォームである「ラクスル」は、印刷機を持つ提携印刷会 社と、印刷物の作製を依頼したいユーザーとを結びつける仕組みと捉えら れる。サービス開始は 13 年 3 月である。

ユーザーが「ラクスル」のウェブサイトから印刷物を注文すると、注文データ が加工された上で、提携印刷会社に印刷が委託される。作製された印刷物 は、提携印刷会社から直接ユーザーへ届けられる。

この一連の商流の特徴は、印刷会社が持つ印刷機の非稼働時間を利用す る点にある。そのため、「ラクスル」のプラットフォームは、提携印刷会社に対 し、印刷機の稼働率向上という付加価値を提供することとなる。

一方、印刷業の従来のビジネスモデルでは、営業やデザイン等、印刷に至 るまでの前工程に人手がかかっていた。さらに、ボリュームディスカウントが 効かないため、小ロットの印刷では 1 単位当たりのコストが割高となってしま っていた。

「ラクスル」では、ユーザーがオンライン上で発注を行うため、ユーザーの要 望の確認等の営業活動にかかる人手や拠点が不要であり、また、印刷機の 非稼働時間を利用することで印刷コストを抑制できる。「ラクスル」のプラット フォームを利用するユーザーに対して提供されるのは、小ロットかつ低コスト の印刷物という付加価値である。同時に、小ロットの印刷物を必要とする中 小企業の利用機会の増加にもつながっている。

「ラクスル」のユーザーのほぼすべてが、印刷物を実際に必要とするエンド ユーザーである。中小企業の利用機会の増加もあって、ラクスル」の累計ユ ーザーは拡大を続け、18/8期第2四半期末の累計ユーザー数は55.5万ユ ーザーに達している(図表 2)。

◆ 印刷事業~集客支援サービス
ユーザーが注文する印刷物の用途の多くは、販売促進のためのものである。 それらの印刷物は、ユーザーの顧客または潜在顧客へと配布されることとな る。こうした新聞折り込みやポスティング、ダイレクトメール等の印刷物の配 布を行うのが、集客支援サービスである。「ラクスル」の一サービスとして、15 年 3 月に開始された。

集客支援サービスでは、印刷ECサービスと同様、実際に配布作業を行う事 業者をネットワーク化するとともに、ほとんどのプロセスを EC 化することによ り、人件費を中心とした営業費用を抑え、少量の配布でも利益が出る構造と なっている。

集客支援サービスは印刷 EC サービスの周辺事業であるため、同社にとっ ては、客単価の上昇、ユーザーとの関係性強化、注文件数増加、リピート率 の上昇(ユーザーロイヤリティの向上)といったメリットがある。

◆ 物流事業
物流事業では、荷主と運送会社をつなぐ BtoB 向けのシェアリングプラットフ ォーム「ハコベル」を運営している。15 年 12 月に開始された。

国内のトラック運送業界は多重下請け構造になっているため、荷主と実際 に荷物を運ぶ運送会社が直接つながっていない。また、車両の手配等の業 務プロセスが人力に依存している状況にある。「ハコベル」は、荷主による配 送依頼、運送会社による受注、配送状況の管理・共有をオンライン上で完 結する仕組みを有する。現在は都市内輸送とラストマイル配送が利用の中 心であり、18 年 1 月時点で約 12,000 ユーザーが登録している。

なお、「ハコベル」に関連して、17 年 7 月にヤマトホールディングス(9064 東 証一部)との資本提携に至った。今後、ヤマトホールディングスの業務シス テムに「ハコベル」のテクノロジーを活用するほか、両社の強みを組み合わ せた企業間物流のプラットフォームの構築を検討していくことになる予定で ある。

◆ 生産プロセスの R&Dノウハウとマーケティング効果の蓄積が強み
印刷事業における同社の特色及び強みとして、(1)自社保有の 3 台の印刷 機を用いて最適な生産プロセスを自社で構築し、提携印刷会社へ横展開 する R&D のノウハウ、(2)プロダクト開発に関わるエンジニアチームの存在、 (3)累計 40 億円以上の広告宣伝費を投入したマーケティング効果の蓄積 が挙げられる。

印刷事業で培われた強みは、物流業界でのシェアリングプラットフォームの 構築にも活かされている。その根底にあるのは、「産業ごとのプラットフォー ムを創出することで、各業界に残る非効率部分を解消する」という思考であ る。その思考をもとにした事業領域の設定の巧みさもまた、同社の強みの源 泉となっている。

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