新規カバレッジ キトー(6409)のこぼれ話

2013/06/07

【アナリストコラム 高橋 俊郎】

年明けからの株価上昇によりカバー候補となる少ない企業もフェアバリューを超える水準にまで上昇し、また、取材の関係もありなかなかレポート量産ができないのが悩みである。その中で、今回、会社側の強気度合いとバリュエーション面から株価は割安と判断したキトー(6409)を新規にカバーした。レポートからこぼれた話を書こうと思う。

キトーの沿革を見る中で最も特徴的な点は、2003年にカーライル・グループが100%出資する特別目的会社カーライル・ジャパン・ホールディングス・スリーによるTOBにより、一時期株式上場をやめていた点である。このときの経緯はnikkei BP netやカーライル・グループのサイトに詳しくのっている。
人員整理、経営陣の交代もせずに、キトーの事業価値を高める提案であったこともあり、TOBは成功した。実施したことは、ノンコア資産の売却、キャッシュフロー経営の重視、トヨタカイゼン方式の導入、本業特化、米国子会社経営陣の強化、中国事業の強化である。インタビュー記事を読んでいると、いわゆる「外圧」という「大義名分」が、頭でわかっていても動けない状態から行動へ移す契機になったようだ。そして、カーライル・グループのグローバルなネットワークにより海外の経営強化が推進された。まだ、現在進行形であるがキトーの事例は、本業集中による業績の伸張を見る限り非常に合理的に良い結果となっているだろう。

キトーの主力製品は電動・手動のチェーンクレーンである。電動は工場内で使用され産業全般に販売される。手動は建築土木向けの販売が多い。産業全般と書くと、造船や自動車や電子部品の工場を思い浮かべるかと思う。たしかに、販売はしているが、こんなところにもキトーという使われ方もしている。
ホテルの厨房内である。スープ用の大型鍋を移動させるために電動ホイストが採用されている。この際の電動ホイストのオイルはフードグレードといい人体影響の少ないものを使用するなど、日本企業ならではの細かさを追求している。
国内の設備投資は回復感に乏しく、これからの成長も見込み辛いが、足元では震災復興の追い風もある。土木建築業界は、消費増税駆け込み需要で13年9月までは好調な受注を確保できると予想されている。その後も97年の二の舞にならぬように落ち込みを平準化する施策も期待できるだろう。
その国内は世界最大手のクレーン・およびクレーン関連機器製造のKONECRANES(フィンランド)との提携をしている点も底堅く業績を伸ばせる要因だろう。いわゆる強者連合である。
KONECRANESとは製品と地域で提携している。製品については、キトーはKONECRANESが株式会社明電舎との合弁により展開してきたMHSコネクレーンズをキトーが事業継承することにより日本でのワンストップサービスを実施する。この効果がキトーの日本市場のシェアアップにつながっていると推測される。地域については、KONECRANESのロープホイストを中国で販売し、また、欧州での販売拡大の提携をしている。
同社の現在遂行中の中期経営計画は11/3期売上高281億円を16/3期に580億円まで引き上げる野心的な計画である。現時点ではベストシナリオの感を受けているが、全く達成不可能ではないと考えている。

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
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