株価暴落時の狼狽売りは禁物

2021/05/14

■株価暴落時に狼狽売りをする初心者が多い
■市場の動揺なのか事実の悪化なのかを見極めよう
■市場の動揺なら初心者の売りが株価回復の始まり
■長期投資なら買いのチャンスかも
■積立投資は止めずに続けるべし
■この世の終わりは来ないが銘柄の終わりには要注意

(本文)
■株価暴落時に狼狽売りをする初心者が多い
株価が暴落すると、この世の終わりが来たような気がして狼狽売りをしてしまう投資初心者が多いようだ。長い間株式投資をやっていれば、株価が時として訳のわからない動きをするという事を身をもって知る事になるので、多少のことでは狼狽しなくなるのだが、免疫が無いと簡単に狼狽してしまうという事なのだろう。

まずは大きな目でチャートを見てみよう。日経平均が数%下がったところで、少し長めのチャートの中では「誤差の範囲」だろう。動揺する事は全くない。株価が2割程度下がる事は、長期のチャートを見れば珍しくないのだから、身をもって体験していない初心者も、チャートを見ながら過去の暴落時の様子をイメージしてみると良いだろう。

■市場の動揺なのか事実の悪化なのかを見極めよう
株価が暴落するのは、市場心理が動揺した場合と悪い事が起きている場合の二つである。暴落した場合には、どちらであるのかを見極める事が最も重要なのである。

株価は美人投票の世界なので、特に悪い事が起きていなくても、人々の心理が弱気に傾くと売り注文が増えて株価が下がる。高値警戒感を持つ人が多い時には、市場心理が少し悪化しただけでも大きな売り注文が出て株価が急落しかねない。そうした場合には、後述のようなメカニズムも働いて株価が暴落する可能性もあろうが、しばらくすると何事も無かったように株価が戻る場合も多いので、狼狽売りは禁物である。

もっとも、本当に悪い事が起きている場合には、暴落が本格的な暴落の第一歩である可能性もあるので、要注意である。たとえば世界経済に本格的な問題が発生していて事態が深刻化するかも知れない時、あるいはバブルが崩壊して長期不況に突入しそうな時、等々である。

本稿が戒めているのは狼狽売りであって、慎重に暴落の性格を見極めた上で、後者であると判断した場合には当然に売るべきである。もちろん、どちらであるのかを見極めるのが難しい場合も多いだろうが、少なくとも努力は惜しむべきでは無かろう。

■市場の動揺なら初心者の売りが株価回復の始まり
株価が暴落すると、それを加速するさまざまなメカニズムが働くことになる。借金して株を買っていた投資家は、不安になった銀行から返済を迫られて、泣く泣く持ち株を売る事になろう。機関投資家の担当者は「損切り」の社内ルールによって、泣く泣く持ち株を売らされる事になるだろう。

そうした売りによる暴落を見た初心者が狼狽売りをして更に暴落を加速させるだろう。そうした事を予想した投機家があらかじめ株を空売りしておくので、その売りも暴落を加速させるだろう。

初心者が狼狽売りを終えると、市場には売る人が残っていないので、投機家の買い戻し等々によって株価はスルスルと戻っていく事になるかも知れない。つまり、「初心者が狼狽売りをしたのは、結果として底値であった」という事になりかねないのである。

こうした暴落が更なる暴落を招くメカニズムについては、https://column.ifis.co.jp/toshicolumn/tiw-tsukasaki/118077を併せて御参照いただければ幸いである 。

■長期投資なら買いのチャンスかも
もしも市場心理の動揺による株価の暴落だと考えるのであれば、長期投資家にとっては買いのチャンスかも知れない。暴落がいつまで続くのか、どこまで値下がりするのかを予想する事は容易でないだろうが、株価が割安な所まで下がったのであれば、いつかは戻るだろうと考えて買うという選択肢は十分検討に値するはずだ。

もっとも、株価が仮に数%下がったからといって、株価が割安になったと即断するのは禁物である。元の株価がそれ以上に割高だったかも知れないからである。「日経平均が数%下がったから買いだ」と安易に考えるのも危険な事だと言えよう。

なお、短期投資の場合には、暴落がどれくらい続くかを予想する事が容易ではないので、下がったところで買おうと考えるのは一層危険である。株価は初心者が予測できるほど単純な動きをするものではないので、「落ちてきたナイフを掴もうとする」ような事は避けておいた方が無難かも知れない。

初心者の中には「株価が暴落したから買いのチャンスだ」と考えて買ったのに、株価がその後も下落を続けたために、怖くなって買った株を投げ売りした、という人も多いようだ。気をつけたい。

■積立投資は止めずに続けるべし
筆者は投資初心者には投資信託の積立投資を勧めている。理由は多数あるが、今回強調したいのは、「初心者は自分で考えると間違えるから、考えないでルール通りに毎月愚直に積み立てを続けるべき」という点である。

株価が暴落した時に短期投資家が狼狽売りをするならまだしも、「自分で判断しないために積み立て投資をしている」という人が暴落時に自分の判断で積み立てをやめてしまうというのは、自分で決めた事が自分で守れないという事である。それは是非とも避けたいものだ。

■この世の終わりは来ないが銘柄の終わりには要注意
本稿は、平均株価の暴落について論じてきた。「この世の終わりなど滅多にこ来ないのだから、狼狽売りは避けよう」というわけだ。

しかし、個別銘柄については、その限りではない。会社の成長性が市場の予測を下回るようになったり会社の経営がおかしくなったりして「銘柄の終わり」が来ることは珍しくないからだ。

個別銘柄が暴落した場合には、株価が戻らない場合も多いので、予断を持たずに会社の状況についてしっかり調べるべきだろう。

本稿は、以上であるが、当然のこととして投資は自己責任でお願いしたい。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係が無い。また、わかりやすさを優先しているため、細部が厳密ではない場合があり得る。

(5月12日発行レポートから転載)

TIW客員エコノミスト
塚崎公義『経済を見るポイント』   TIW客員エコノミスト
目先の指標データに振り回されずに、冷静に経済事象を見てゆきましょう。経済指標・各種統計を見るポイントから、将来の可能性を考えてゆきます。
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