18年6月ECB理事会の結果とユーロ相場
市川レポート(No.521)18年6月ECB理事会の結果とユーロ相場
- ECB理事会は、政策金利を据え置いた一方、量的緩和政策を年内に終了する方針を決定した。
- 政策金利は、来年夏まで据え置く方針が示され、市場は長期金利低下、ユーロ安、株高で反応。
- ユーロ圏経済は底堅く、物価上昇率も徐々に高まると予想、ユーロは今後、堅調な推移を見込む。
ECB理事会は、政策金利を据え置いた一方、量的緩和政策を年内に終了する方針を決定した
欧州中央銀行(ECB)は6月14日に開催した理事会で、予想通り政策金利の据え置きを決定しました。ただ、市場の関心は、9月末に期限を迎える資産購入プログラム、いわゆる量的緩和政策の行方にありました。同プログラムにおける資産購入額は月300億ユーロですが、今回の理事会で、10月から月150億ユーロへの減額と、12月末での購入打ち切りが決定されました。
ただし、10月からの減額については、今後の経済指標が理事会の中期的なインフレ見通しに沿ったものであることが条件となっており、減額の判断には柔軟性を持たせています。また、購入証券の償還元本の再投資について、資産購入終了後も長期にわたって続けるという方針は維持されました。ここまでは、おおむね市場でも想定されていた内容だったと思われます。
政策金利は、来年夏まで据え置く方針が示され、市場は長期金利低下、ユーロ安、株高で反応
また、今回、金融政策の先行きを示すフォワードガイダンスが修正されました。これまでのフォワードガイダンスは、「政策金利を長期にわたり、資産購入の期間を十分超えるまで、現行水準に据え置く」という旨の内容でした。新しいフォワードガイダンスは、「政策金利を少なくとも2019年の夏まで現行水準に据え置く」という旨の内容となり、より具体的な時期が示されました。
なお、新しいフォワードガイダンスでは、インフレ次第で政策金利を据え置くことも示唆されており、こちらも政策判断に柔軟性を持たせています。市場では、来年半ばまでには利上げが行われると見込んでいた向きも多かったため、今回の修正はハト派的と受け止められました。そのため、6月14日の欧州市場では、ドイツ10年国債利回りは低下、ユーロは対ドル、対円ともに下落、ドイツDAX指数は上昇という反応になりました(図表1)。
ユーロ圏経済は底堅く、物価上昇率も徐々に高まると予想、ユーロは今後、堅調な推移を見込む
資産購入減額や政策金利の判断は、インフレなど経済指標によるところが大きく、今後は一層、ユーロ圏のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が市場の焦点になると思われます。なお、弊社では、ユーロ圏の実質GDP成長率について、潜在成長率(推定1%台前半)を上回る水準が基調として来年いっぱい続くとみています。消費者物価指数の上昇率も、景気拡大の継続に伴う需給ギャップの縮小を背景に、徐々に高まると予想しています。
弊社の見通しに沿った展開となれば、量的緩和政策は予定通り年内に終了し、ユーロは来年の利上げを織り込み、年末に向けて対ドル、対円ともに堅調な推移が想定されます。なお、ユーロドルについて、ごく短期的には、1ユーロ=1.15ドル前後で下げ止まるかが注目されます。この水準で反転し、1.18ドル水準を上抜ければ、ダブルボトムを形成するため(図表2)、チャート上は、1.20ドル台の回復が視野に入ることになります。
(2018年6月15日)
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