日米首脳会談の注目ポイント
市川レポート(No.348)日米首脳会談の注目ポイント
- 安全保障でトランプ米大統領がマティス米国防長官と同様の認識を示せば日本に好ましい展開。
- 米国の円安批判は国内企業向け、本邦自動車産業の貢献も理解済み、通商の対立は回避へ。
- 対中政策重視の米国は日本と友好関係を確認し経済協力を得れば為替言及の必要性は低下。
安全保障でトランプ米大統領がマティス米国防長官と同様の認識を示せば日本に好ましい展開
安倍晋三首相は2月10日、米ワシントンでトランプ米大統領との初めての首脳会談に臨みます。市場ではトランプ米大統領が為替に言及するのではないかとの警戒感もあり、足元のドル円相場はやや神経質な動きが続いています。初回の会談では、「安全保障問題」や「通商問題」を中心に意見交換をしつつ、日米関係の重要性を改めて確認していくことになると思われます。
「安全保障問題」について、安倍首相とマティス米国防長官は2月3日に首相官邸で会談を行い、日米同盟の強化に取り組むことを確認しました。またマティス米国防長官は尖閣諸島が日米安全保障条約第5条に基づく米国の対日防衛義務の適用対象だと述べ、日本の在日米軍駐留経費については他国の手本と評価しました。トランプ米大統領が2月10日の会談で同様の認識を示せば、日本にとっては好ましい展開となります。
米国の円安批判は国内企業向け、本邦自動車産業の貢献も理解済み、通商の対立は回避へ
「通商問題」について、トランプ大統領は就任後、日本との自動車貿易を不公平とし、また中国や日本などが通貨を切り下げてきたと述べました。これに対し、日本の自動車産業は米国の雇用に貢献しており、金融緩和は物価安定のためで円安誘導を目的としたものではないというのが日本の主張です。一見すると通商問題については双方の歩み寄りがやや難しいように思われます。
ただトランプ米大統領の発言は、そもそも米企業経営者との会談で国内製造の拡大を要請するなかで出たものであるため、この点は幾分割り引いて考える必要があります。また安倍首相とトランプ米大統領は1月28日に電話会談を行っており、その際すでに米国は日本の自動車産業の貢献について理解を示しています。そのため通商問題、特に自動車貿易で日米両国が激しく対立することは避けられると思われます。
対中政策重視の米国は日本と友好関係を確認し経済協力を得れば為替言及の必要性は低下
米国は、個別分野もしくは包括的な自由貿易協定(FTA)を通じ、日本と貿易・投資の関係を深めることに意欲的と推測されます。日本もまずは2月10日の首脳会談で、米国に対し積極的な経済協力の姿勢を示すものと思われます。報道によれば、日本側は米国のインフラ事業に投資して数十万人の雇用創出につなげるプランを準備し、トランプ政権との関係強化を図るとみられます。
なお米貿易赤字は、対中貿易赤字がその約半分を占め(図表1)、消費財の多くは中国から輸入されています(図表2)。そのためトランプ政権は今後、中国に対し安全保障と通商面で十分な対策を打ち出すものと予想されます。この点を勘案すれば、軍事上の重要拠点である日本との友好関係を首脳会談で確認し、さらに経済協力を取り付けることができれば、米国にとっては申し分ない成果であり、為替への言及まで踏み込む必要性は低下すると思われます。
(2017年2月7日)
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