中国の経済指標発表を受けた金融市場の反応
市川レポート(No.161)中国の経済指標発表を受けた金融市場の反応
- 中国では製造業の成長ペースの鈍化をサービス業などが補い、全体での大幅減速を回避。
- ドル円の上昇は続かず、注目は来週の日米金融政策でありドル売り円買い圧力に注意。
- 日本株にも動意はみられず、投資家の目はすでに3月期決算企業の中間決算発表へ。
中国では製造業の成長ペースの鈍化をサービス業などが補い、全体での大幅減速を回避
19日に発表された中国の7-9月期実質GDP成長率は前年同期比+6.9%と、市場予想の中心値である同+6.8%を上回りました。しかしながら前期から0.1ポイント低下し、成長率は約6年半ぶりに7.0%割れとなりました。同時に小売、生産、投資に関する経済指標も発表されましたが、当局が経済政策を策定する際に重視している工業生産は、9月が前年比+5.7%と8月の+6.1%から鈍化し、生産活動の低迷が浮き彫りになりました。
年初から9月までの累計実質GDPの前年比成長率は、第1次産業が+3.8%、第2次産業は+6.0%、第3次産業は+8.4%でした(図表1)。6月までの累計では、それぞれ同+3.5%、+6.1%、+8.3%でしたので、製造業の成長ペース鈍化をサービス業など他産業が補い、経済全体で大幅な減速が回避されている様子がうかがえます。参考までに名目GDPにおける第1次産業のウェイトは直近で8.0%、第2次産業は40.6%、第3次産業は51.4%です。
ドル円の上昇は続かず、注目は来週の日米金融政策でありドル売り円買い圧力に注意
GDPの発表直後、ドル円はドル高・円安で反応し、1ドル=119円台前半から後半へ上昇しました。ただ指標の内容は前述の通り、景気先行き懸念を払拭するほどのものではないと思われます。実際ドル円は同日の東京時間夕刻に再び119円台前半に下落するなど、為替市場の中国経済に対する見方は依然慎重であり、今回のGDP統計は相場の地合いを好転させるには至らなかったと考えます。
ドル円は200日移動平均線が強力な抵抗線として作用し、次第に上値が重くなりつつあります(図表2)。10月15日にはいったん118円07銭水準の安値をつけていますので、目先はこのレベルを維持できるかが焦点となります。なおドル円は中国の経済指標よりも日米金融政策への感応度が大きいとみており、来週27日、28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と30日の日銀金融政策決定会合には注意が必要です。日米とも政策据え置きであればドル売り円買い圧力が強まる可能性があります。
日本株にも動意はみられず、投資家の目はすでに3月期決算企業の中間決算発表へ
日経平均株価は上海株の動きをにらむ展開となりました。GDP発表後の上海株の堅調推移を好感し、いったんは前週末比でプラス圏に浮上したものの、その後は上海株が反落すると、日経平均株価も歩調を合わせる形で下落基調に転じました。なおこの日の東証1部売買代金は、活況の目安となる2兆円を約2カ月ぶりに割り込みました。つまり本邦株式市場でも、今回の中国の経済指標を受けて主体的に動こうとする向きは少なかったということになります。
注目された中国の7-9月期実質GDPでしたが、結果的に日本株には明確な動意がみられませんでした。投資家の目はすでに、10月下旬から11月中旬にかけて本格化する3月期決算企業の中間決算発表に向いていると思われます。今後を展望する上では、夏場のチャイナ・ショックが業績にどのような影響を与えたのかを見極める必要があり、市場では鉄鋼、非鉄金属、機械、電気機器などの業種が注目されています。無難に乗り切れば、年末にかけて日本株が戻りを試す余地は徐々に広がると思われます。
(2015年10月20日)
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