ドル円の押し下げ要因
米長期金利(10年債利回り)が一時2.67%と2014年7月以来の水準まで上昇するなど、今年に入り米金利が大きく上昇しているにもかかわらず、ドル円は軟調な動きが続いており、為替と金利の関係が崩れています(図表1)。ユーロについても、米独金利差が高止まりしているにもかかわらず、ユーロが上昇と、金利以外の要因が大きく影響している状況です(図表2)。
▣ 円高は日銀による金融政策の修正観測
日銀は1月9日、国債買入れオペで、「10年超25年以下」、「25年超」のオファー金額を減額しました。この措置を契機に、日銀の量的緩和縮小への警戒が広がり、ドル円と米長期金利の動きのかい離が顕著になりました。日銀は、22-23日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決めるとともに、黒田総裁は「いわゆる出口のタイミングやその際の対応を検討する局面には至っておらず、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要」としています。とはいえ、昨年12月の金融政策決定会合の議事要旨では、「現時点で、金融仲介機能に支障は生じていないが、銀行等の最近の収益状況をみると、低金利環境が金融機関の経営体力に及ぼす影響は累積してきている」、「先行き、経済・物価情勢の改善が続くと見込まれる場合には、『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』の枠組みのもとで、その持続性を強化する観点も含め、金利水準の調整の要否を検討することが必要になる可能性もある」との見解が一部の委員から示されました。欧米が金融緩和の縮小(米国は利上げ、ユーロ圏は量的緩和の早期の終了観測)に動く中、日銀が年内にもゼロ%程度としている長期金利の水準を引き上げに動くとの思わくも根強く残ります。
▣ ドル安の要因は
一方、ドル安材料としては、トランプ政権の政策運営、保護主義への警戒、トランプ陣営のロシア疑惑などが挙がります。
ムニューシン米財務長官が1月24日に「弱いドルは貿易面で好ましい」と発言したことを受け、強いドルを国益とする米国の伝統的な姿勢を転換したとの見方が広がりました。ただ、翌日にはトランプ大統領が「ドルがさらに強くなり、最終的には強いドルが望ましい」と述べ、ムニューシン氏の発言は誤って解釈されたとの認識を示したことを受け、金融市場は一旦落ち着きました。また、トランプ氏は環太平洋連携協定(TPP)について、「米国にとって条件が大幅に改善されるのであれば、復帰する可能性に道を開くことも検討する」と述べ、保護主義への警戒も幾分和らぎました。
とはいえ、トランプ氏は以前から米国の貿易赤字について不満を表明しており、保護主義やドル安を志向する姿勢が大きく変わったとは言い切れません。
1月22日には、米政府は太陽電池製品と住宅向け大型洗濯機を対象にした緊急輸入制限(セーフガ ード)の発動を決定しました。中国に進出する米国企業に対する知財侵害についても問題視している模様です。
▣ 金融政策の方向性からはドル高地合いも
トランプ大統領の一般教書演説が1月30日に予定されています。インフラ投資計画に加え、通商政策についても発言も注目されます。保護主義への警戒が広がると、ドルが下押しされる可能性があります。
金融政策では、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを継続するとともに、バランスシート(保有資産)の縮小を粛々と遂行していくとみられます。ただ、金融市場は日銀や欧州中央銀行(ECB)の政策変更の有無について神経質になっている状況です。ECBは今年9月までは月300億ユーロの資産買入れを継続する方針ですが、この9月で資産買入れ(量的緩和)を終了させ、来年の早い時期に利上げに踏み切るとの見方も出てきています。最近のドル安は、ECBの量的緩和の早期終了観測からユーロ買い・ドル売りが強まったことも一因です。
日銀の金融政策の修正、ECBの量的緩和の早期終了観測、米国の保護主義への警戒など簡単に払しょくできそうにありません。ドル円の上値が重い状態が続きそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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