9月の懸念
9月は、欧米の金融政策、米国の通商政策、北朝鮮をめぐる地政学リスクのほか、米国の債務上限問題や来会計年度の歳出法案をめぐる協議が注目を集めそうです。
▣ 米国の債務上限問題、来会計年度の歳出法案審議
米国では連邦政府が国債を発行できる金額に法定の限度額があり、上限を引き上げるには議会承認が必要となります。今年3月15日に政府債務上限の撤廃期間が切れたことで、16 日には債務の上限(15 日の債務残高である約19.8 兆ドル)が復活しました。
議会予算局は10月にも政府預金が底をつくと試算しています。財務省は緊急措置でやりくりしてきましたが、議会が債務上限の引き上げに合意できない場合、利払いや償還ができない債務不履行(デフォルト)に陥る恐れがあります。
他方、9月末は年度末にあたり、それまでに2018会計年度(17年10月~18年9月)の歳出法案を可決しなければ政府機関閉鎖などの恐れもあります。
2013年には、2014会計年度の暫定予算が前日までに成立せず、10月1日から多くの政府機関が閉鎖されました。医療保険改革法(オバマケア)を潰したい共和党が、予算と債務上限引き上げを人質にとる戦術を取ったことで、10月16日まで政府機関の閉鎖が続きました。この混乱への批判は強く、オバマ大統領、議会ともに支持率を下げることになりました。この局面では、シリア情勢をめぐり米国の軍事介入が先送りされたことや、米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)の縮小開始を見送ったことを好感し、過去最高値を更新していた米株が大きく下落、デフォルト懸念から10月償還の短期債利回りが急上昇しました(図表1、2)。
以降は、デフォルトや政府機関の閉鎖は回避されてきました。今回も、2013年のような事態には追い込まれないとの見方が大勢です。ただ今年5月に、9月末までの連邦政府の歳出を手当てする包括的歳出法案が成立した際には、トランプ大統領が求めていた「国境の壁」の建設を開始する資金や、医療研究などの国内プログラム予算の削減などは、いずれも拒否されました。トランプ大統領は、自身が掲げた公約がほとんど盛り込まれなかったことに対し、年内に強制的な政府閉鎖に持ち込むことも辞さない姿勢を示しました。8月22日には、「政府閉鎖が必要になっても、メキシコ国境に壁を建設する」と発言したことを受け、市場に警戒感が広がりました。同大統領は壁建設着手に向けた16億ドルの予算計上を要請しており、これから本格化する来会計年度の歳出法案をめぐる協議が難航することも想定されます。
▣ 欧米の金融政策
FRBは、米連邦公開市場委員会(FOMC、9月19-20日)で、バランスシート(米国債などの保有資産)の縮小開始を決定するとみられます(図表3)。他方、欧州中央銀行(ECB)は理事会を7日に開きます。現状維持となる可能性が高いものの、来年から開始されるとみられる債券購入プログラムの段階的な縮小が示唆されると、欧米の緩和マネーの縮小が改めて意識される可能性があります。
▣ 通商政策
米国、カナダ、メキシコは、トランプ大統領の要望で北米自由貿易協定(NAFTA、米国、カナダ、メキシコによる自由貿易協定)の近代化に向けた再交渉を開始しています。域内で生産された部品をどの程度使えば完成品の関税をゼロにするかを定める「原産地規則」の基準の厳格化、米国産自動車部品の調達率引き上げ、反ダンピング(不当廉売)課税の拡大、他国の通貨安誘導を制限する「為替条項」の導入などを要求している模様です。トランプ大統領は22日の演説で、「我々が合意に達することができるとは思わない。そのため私は、ある時点で我々はNAFTAを撤廃することになると考えている」と述べるなど、早くも波乱含みです。今後は、第2回会合を9月1~5日にメキシコで、9月下旬に第3回会合をカナダで、10月中に第4回会合を米国で開く予定になっています。
▣ 地政学リスク
北朝鮮では9月9日に建国記念日を迎えます。昨年の9月9日には、国際社会が自制を求める中、核実験を強行しました。同国の国営メディアは実験について、「戦略弾道ミサイルに装着するための標準化、規格化された核弾頭の構造と動作、特性、性能と威力を最終的に確認した。より打撃力の高い各種核弾頭を、思いのままに必要なだけ生産できるようになった」と報じました。この実験で、北朝鮮の脅威が一段と増すことになりました。
北朝鮮は米韓合同軍事演習(8月21日~31日)への反発を強めています。北朝鮮をめぐる地政学リスクについても予断を許さない状況が続きます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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