日銀、達成時期先送りも追加緩和は否定

2017/07/21

▣ 物価目標の達成時期を「2018年度頃」から「2019年度頃」に先延ばし

日銀は7月19、20日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決めました。「保有残高の増加額年間約80兆円をめど」とする長期国債の買入れペースについても変更ありませんでした。

併せて公表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、成長見通しを引き上げるとともに、物価見通しを引き下げました。また、「2018年度頃」としていた物価目標の達成時期を、「2019年度頃」に先送りしました。日銀は、2013年4月に異次元の金融緩和策を導入し、物価目標の達成時期を2年程度として以降、物価見通しを引き下げながらも、2年後には物価目標を達成するとの見方を維持してきましたが、今回も同様の見直しとなりました。

他方、長期国債の買入れペースについては、足元では年間50兆円程度の増加まで落ちてきています。保有国債が増え続けていることから、保有国債の償還も増えることが見込まれます。月々の買入額が変わらないとしても、保有国債の償還が増えるため、保有残高の増加が鈍化していくことが見込まれます。ただ、日銀は「80兆円」の数字を明記し続けることで、マネタリーベースを拡大させる姿勢を示し、円高方向の動きを抑制したいとの意向のようです。

もっとも、米連邦準備制度理事会(FRB)が2014年10月で量的緩和政策を終了させ、米国のマネタリーベースが横ばいで推移する一方、日銀は大幅にマネタリーベースを拡大させてきました。ただ、2014年10月末のドル円は112円程度と、足元の水準とほぼ変わらず。マネタリーベース拡大が円安を促す効果が薄れてきている可能性があります。

巨額の国債買入れやマネタリーベースの拡大の効果についても再検証する必要があるかもしれません。

▣ 黒田総裁への質問は、「出口」から追加緩和や低迷する物価がメインに

黒田総裁の記者会見では、物価目標の達成時期が先送りされたことから、前回話題になった「出口」(金融政策の正常化)についての質問はなく、さらなる緩和策や低迷する物価についての質問が目立ちました。

主な発言は、

  • 追加緩和については、「企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重だが、物価上昇モメンタムは維持されており、現時点では追加の金融緩和は必要ない」
  •  現行の長短金利操作付き量的・質的緩和策は、「柔軟に経済・物価・金融情勢に対応できる、持続可能性の非常に高い枠組み」
  • また、「企業や家計の予想物価が上昇すれば実質金利がさらに下がり、緩和効果が強まる」
  • 株価指数連動型上場投資信託(ETF)の大量購入について、「東証の時価総額全体と比べると非常に小さい。コーポレートガバナンスは阻害しない。信託銀行が適切な行動をとっている」
  • 2%の物価目標の水準については、「消費者物価指数は高めにでてくる癖があるため、物価目標もやや高めに設定する必要がある。また、ある程度の物価上昇を確保する必要がある。グローバルスタンダードの面では、各国が2%の物価目標を採用しており、為替レートの安定などに寄与している。また下げようという議論もなされていない」

黒田総裁は来年4月で任期を迎えますが、再任の可能性も残ります。いつまで国債やETFを買い続けることができるかは見通せませんが、黒田総裁の任期中は、強気の姿勢(2年後には物価目標達成)とともに、長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策が続く可能性が高いとみられます。

短期金利については日銀当座預金にマイナス金利を適用し、長期金利についてはゼロ%程度に誘導する「長短金利操作(イールドカーブコントロール)」と、物価目標達成まではマネタリーベースの拡大方針を継続するという「オーバーシュート型コミットメント」が継続しそうです。

欧州中央銀行(ECB)は量的緩和(資産購入プログラム)の縮小、FRBはバランスシート(保有資産残高)の縮小が見込まれるものの、日銀は「長短金利操作付き量的・質的緩和」を堅持する姿勢。国内金利は柔軟性に欠ける低位での動きが続きそうです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「投資環境」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
内外の投資環境分析を基に、投資に資する情報、見通しなどを、タイムリーにお伝えします。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ