中国の崩壊が始まるのか?
景気減速は明らかだが
ついに中国の崩壊が始まるのでしょうか(経済危機の到来や政治体制の転覆など)。もしそんなことになれば、世界中に甚大な衝撃を与えます。とりわけ、中国市場に依存する日本や韓国などに対してです。
たしかに最近の景気減速は明らかです。2018年の経済成長率は6.6%と、1990年以来の低水準になりました(他国と比べれば高成長ですが)。2019年は6%台前半に下がりそうです。しかし結論を言えば、中国の躍進はまだ続くでしょう。データだけではわからない強みが、中国には数多くあるからです。
豊かになろうとする努力を、米国は妨害できない
中国の躍進に慌てた米国は昨年、関税などで中国の勢いを奪おうとしました。しかし、そのような米国の試みは、中国の勢いを一時鈍化させることができたとしても、完全に食い止めることはできません。
なぜなら、中国が持つ潜在力を踏まえると、その台頭は当然と言えるからです。中国では桁外れに多数の人々が、一般的な日本人以上によく学び、よく働いています。そうした人々からなる巨大な国が豊かになっていくのは、道理にかなっています。それを他国が邪魔するのは、倫理的にも許されません。
人類の偉業
1990年以降、中国では7億人を超える人々が極貧から脱し(図表1)、全人口に占める極貧層は1%以下になりました。かつて人類が成し遂げたことのうちで、最大級の偉業だと認めねばなりません。
むろん人権弾圧などは非難されるべきです。ただし日常において、政治が意識される場面は多くありません(日本も同様ですが)。また、格差は大きいものの、米国などとは違って低中所得層の実質所得も著しく増えました。そのため、共産党支配への不満が体制を揺さぶる、といった状況ではありません。
西洋式の経済・政治を強要することはできない
米欧では、国民が豊かになるにつれ、中国でも(西洋式の)自由な市場経済と民主主義が広がるだろう、と期待する人もいました。最近、そのようにならなかったという失望が、しばしば表明されます。
しかし、いま露見しているのは「西洋式」の欠陥です。米英では市場経済のもとで格差が広がり、民主主義の根幹をなす「機会の平等」が空文化しています(図表2)。そして分断が深まり、国の意思統一が困難になりました。その表れが、米国の政府機関閉鎖や英国の欧州連合離脱をめぐる手詰まりです。
中国の夢と屈辱
一方の中国には、過去の栄光を取り戻そうという「夢」があります。奥底にあるのは、19世紀以来、列強に虐げられたという「屈辱」です。これらで団結した超大国が躍進するのは、自然の成り行きです。
そのように大きな構図をみると、世界経済の中心は「西から東へ」移動しつつある、と判断されます。近代以降の世界を形作ってきた西洋の人がそれを警戒するのは、よく理解できます。理解しがたいのは、東洋の一角をなす日本において、中国の崩壊を願望するかのような言説がいまだに存在することです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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