アルゼンチン取材報告①-美しい停滞国
なぜ訪れる価値があるのか?
20か国・地域首脳会議(G20サミット、11月30日~12月1日)に対する関心が、金融市場で日増しに高まっています。このとき米国と中国の間で、通商政策をめぐる首脳会談が行われるためです。
開催地はアルゼンチンの首都、ブエノスアイレスです。筆者は11月、この遠方の地を訪れる機会を得ました。今年、トルコと並び「新興国」の通貨危機を代表する国となったからです(ただしトルコ・リラは最近上昇。図表1)。また、通貨の本質や日本経済の将来を考察する上で、一度は訪れたい国です。
別名は「南米のパリ」
アルゼンチンと聞いて日本人が思い浮かべるのは、サッカーとタンゴでしょう。ただ、それ以外のイメージに乏しいのが実状かもしれません。地理的な遠さや治安面の不安から、観光も敬遠されがちです。
しかし実は、非常に魅力的な国です。欧州から来た移民が発展させた国なので、ブエノスアイレス中心部(写真1)はフランスやスペインを思わせます。食事の質も高く、普通の人々は穏やかです。一部の地帯や夜間の外出を避ければ、身の危険を感じることは特段ありません(油断は絶対禁物ですが)。
高インフレにもかかわらず、意外に平穏
意外なことですが、ブエノスアイレスに限って言えば、景気が悪いようにはみえません。雰囲気の良い繁華街(写真2)へ行くと適度な賑わいがみられます。大きな建設工事なども数多く行われています。
通貨ペソが急落したのは(対米ドルで年初に比べ半値以下)、財政懸念や年40%に及ぶインフレのためです。とはいえ、普段の生活が混乱している様子は特にみられません。ペソはもともと信用されていないので、多くの人は貯蓄をドルで保有しているからです(ドル高に伴い、貯蓄額はペソ換算で急増)。
リスクシナリオ:低所得層の不満から政局動乱、通貨危機再燃へ
ただし賃金はペソであり、その増加はインフレに追いついていません。そのため貯蓄の余裕がない低所得層には極めて厳しい状況です。そうした不満により、これから激しいデモやストが増えるでしょう。
最も注目されているのが、来年10月の大統領選挙です。現政権(マクリ大統領が率いる中道右派政権)の規制緩和など改革路線は、日系企業を含め現地ビジネス界から高い評価を得ています。それだけに、低所得層の根強い支持を得る左派が政権を奪回すれば、通貨危機再燃という展開も十分あり得ます。
新興国ではなく停滞国
しかし実際にアルゼンチンを訪れてわかるのは、先進国以外を「新興国」と一括するのはナンセンス、ということです。例えば東南アジアやインドは、いま興隆しつつあるという意味で、まさに新興国です。
一方アルゼンチンは、かつて世界有数の豊かな国でしたが、20世紀半ば以降、世界の発展から取り残されました。よって正確には、新興国ではなく「停滞国」です。美しい国ですが、今後も急成長はあまり期待できません。この点で似ている日本は、アルゼンチンの歴史から学ぶべき教訓があるはずです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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