リーマンショックを覚えているか?
あのショックから10年
明日でリーマンショックから10年になります。2008年9月15日、米国の大手証券会社・リーマンブラザーズが経営破たんしたのです。その強烈な印象は、金融市場において今もはっきり残っています。
なお、海外でリーマンショックと呼ばれることはほとんどなく、「世界金融危機」といった呼称が好まれます。混乱が世界中に広がった点を踏まえれば、その方が適切な場合もあります。しかし、震源地はあくまでも米国の金融市場だったことを忘れてはなりません。よって、リーマンショックでよいのです。
市場参加者のパニック
心理的に最も大きな衝撃を受けたのは、金融市場の参加者(金融機関、投資家、中央銀行など)にほかなりません。そして、次に破たんする金融機関はどこかという疑心暗鬼が広がり、パニックに陥ったのです。保有資産のリスクをとにかく圧縮しようと、リスク資産は一斉に投げ売りされました(図表1)。
これだけ大きなショックは、実体経済にも大打撃を与えます(図表2)。リーマンショックの本質は、住宅バブル崩壊による不良債権の著増、それらに伴う金融機関の機能不全です。そのため銀行は融資を、企業は投資や雇用を、個人は借入や消費をそれぞれ減らす、といった動きがしばらく加速したのです。
サブプライムローンがもたらしたバブルの発生と崩壊
バブルは資本主義経済の宿命ですが、リーマンショックは規模の巨大さと経路の複雑さが別次元です。
中心的な役割を担ったのは、住宅バブルのときに米国で流行したサブプライムローン(信用力の低い人への住宅ローン)でした。こうしたローン債権は複雑な(かつ無責任な)投資商品に組み替えられ、これを世界中の投資家が取得しました。しかし、そのような商品は住宅価格の下落に対し極めて虚弱です。リーマンブラザーズが苦境に陥ったのは、サブプライム関連の資産を大量に保有していたためです。
リーマンショックは終わっていない
それは金融市場の劇的な失敗でした。そうしたバブル崩壊の後遺症が簡単に癒えるはずはありません。
実際、現在に至る世界経済の回復は、米国や欧州などの異例な金融緩和策や、中国などの大規模な公共投資に大きな部分を負っています。金融政策については、特に日本などは正常化が始まったばかりです。日米などの政府債務も膨らんだままです。その意味で、リーマンショックは決して終わっていません。また、トランプ米大統領の誕生もリーマンショックの延長線上にあります。金融機関の救済に国民のお金が用いられた一方で人々は家や職を失うという経験が、既存権力への不信と反感を生んだのです。
次のショックは?
今後はどうでしょうか。悪い材料は、いま危機に襲われたら各国の利下げや財政支出の余地が小さいことです。バブルの兆候もあります。中でも米国株は、好調な企業決算を考えても割高です。住宅の世界的高騰も気がかりです。トルコなど一部の新興国景気も、借入れに頼りすぎたバブルだったようです。
良い材料は、米欧金融機関の財務内容や監督・規制体制が改善されたことです。何より心強いのは、リーマンショックの記憶がまだ鮮明であることです。それは能天気な投資行動を抑制します。危機の根源であり、かつこれを増幅した市場関係者は、10周年の今こそ記憶と反省を新たにせねばなりません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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