「日米金融政策の違い」でドル安・円高へ
トランプ氏、大喜び
米国の好調な経済と賢明な金融政策のおかげで、世界的な貿易摩擦にもかかわらず米国株は堅調です。
実際、米国の4-6月期国内総生産(GDP)は実質で前期比年率4.1%増と、約4年ぶりの高い伸び率になりました。この見事な実績をみてトランプ大統領も興奮気味です。1期の結果に大喜びするのはやや軽率ですが、今年のGDP成長率が政権の目標(3%)に達する可能性が高まったことはたしかです。
雇用は予想以上に増加
今年の好景気に関し特に予想外だったのは、就業者数が昨年以上に増加していることです(図表1)。
米国では働ける人はすでに働いているので、就業者の大幅増はもう見込めない、というのが昨年時点の有力な見方でした。ところが実際には依然増加し続けているということは、職に就けない、またはあえて働かない人がまだ多数存在するということです。だとすると、雇用増と低インフレが併存可能です。
インフレも適度だが
というのも、職に就く人がまだ増えるのであれば、既存の賃金を大幅に増やす必要はないからです(実際、平均時給の伸びは現在ほぼ横ばい)。このような環境は、企業(したがって株価)には好都合です。
そして賃金が持続的に増えなければ、インフレ率が健全な形で上昇するとは考えられません。事実、インフレ率は足元約2%と(図表2)、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標近辺にとどまっています。
FRBを悩ませる雇用とインフレの関係
今の状況をみると、雇用の最大化と物価の安定が使命であるFRBの勝利は近い、とも考えられます。
しかしFRBは、失業率がどれだけ下がればインフレが加速するのか、という難問と格闘しています。現在の失業率は4%弱という歴史的な低水準です(図表2)。1960年代にそれが4%を下回った際にはインフレが加速しました。ところが国際化や機械化などが物価を抑える今、その経験則は通じません。
利上げの打ち止めが近づく
それでもFRBは、失業減でインフレ率が上がると信じています。9、12月にも利上げを行う方針なのはそのためです。パウエル議長の簡潔明瞭な説明も奏功し、この2回の利上げは市場も納得済みです。
試練が訪れるのは来年でしょう。政策金利は今1.75~2.0%なので、あと4~5回の利上げ(うち2回は恐らく今年)で、FRBの考える「長期的な政策金利(3%程度)」に達するからです(1回の利上げは0.25%ずつとして)。よって来年の半ば頃、利上げをストップすべきか否かの議論が本格化します。
市場は常に先を読むため、「日米金融政策の違い」はドル安・円高要因に
利上げをストップした場合、その後にインフレが加速すればFRBは批判を免れません。逆に3%を超える水準まで利上げを続け、それにより景気が腰折れしてしまえば、トランプ氏らの逆鱗に触れます。
いずれにせよFRBに対する金融市場の関心は、いつ利上げをやめるのか、そして、いつ利下げに転じるのか、へ向かいます。一方、日銀については、先月実施したように「緩和の持続性強化」と言いつつ、事実上の正常化(金利上昇の容認)を進めざるを得ません。よって市場参加者の好きな「金融政策の方向性の違い」の視点に立つ限り、今後はドル安・円高基調が徐々に強まっていくと予想されます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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