「日米金融政策の違い」でドル安・円高へ

2018/08/08

トランプ氏、大喜び

米国の好調な経済と賢明な金融政策のおかげで、世界的な貿易摩擦にもかかわらず米国株は堅調です。

実際、米国の4-6月期国内総生産(GDP)は実質で前期比年率4.1%増と、約4年ぶりの高い伸び率になりました。この見事な実績をみてトランプ大統領も興奮気味です。1期の結果に大喜びするのはやや軽率ですが、今年のGDP成長率が政権の目標(3%)に達する可能性が高まったことはたしかです。

雇用は予想以上に増加

今年の好景気に関し特に予想外だったのは、就業者数が昨年以上に増加していることです(図表1)。

米国では働ける人はすでに働いているので、就業者の大幅増はもう見込めない、というのが昨年時点の有力な見方でした。ところが実際には依然増加し続けているということは、職に就けない、またはあえて働かない人がまだ多数存在するということです。だとすると、雇用増と低インフレが併存可能です。

インフレも適度だが

というのも、職に就く人がまだ増えるのであれば、既存の賃金を大幅に増やす必要はないからです(実際、平均時給の伸びは現在ほぼ横ばい)。このような環境は、企業(したがって株価)には好都合です。

そして賃金が持続的に増えなければ、インフレ率が健全な形で上昇するとは考えられません。事実、インフレ率は足元約2%と(図表2)、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標近辺にとどまっています。

FRBを悩ませる雇用とインフレの関係

今の状況をみると、雇用の最大化と物価の安定が使命であるFRBの勝利は近い、とも考えられます。

しかしFRBは、失業率がどれだけ下がればインフレが加速するのか、という難問と格闘しています。現在の失業率は4%弱という歴史的な低水準です(図表2)。1960年代にそれが4%を下回った際にはインフレが加速しました。ところが国際化や機械化などが物価を抑える今、その経験則は通じません。

利上げの打ち止めが近づく

それでもFRBは、失業減でインフレ率が上がると信じています。9、12月にも利上げを行う方針なのはそのためです。パウエル議長の簡潔明瞭な説明も奏功し、この2回の利上げは市場も納得済みです。

試練が訪れるのは来年でしょう。政策金利は今1.75~2.0%なので、あと4~5回の利上げ(うち2回は恐らく今年)で、FRBの考える「長期的な政策金利(3%程度)」に達するからです(1回の利上げは0.25%ずつとして)。よって来年の半ば頃、利上げをストップすべきか否かの議論が本格化します。

市場は常に先を読むため、「日米金融政策の違い」はドル安・円高要因に

利上げをストップした場合、その後にインフレが加速すればFRBは批判を免れません。逆に3%を超える水準まで利上げを続け、それにより景気が腰折れしてしまえば、トランプ氏らの逆鱗に触れます。

いずれにせよFRBに対する金融市場の関心は、いつ利上げをやめるのか、そして、いつ利下げに転じるのか、へ向かいます。一方、日銀については、先月実施したように「緩和の持続性強化」と言いつつ、事実上の正常化(金利上昇の容認)を進めざるを得ません。よって市場参加者の好きな「金融政策の方向性の違い」の視点に立つ限り、今後はドル安・円高基調が徐々に強まっていくと予想されます。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ