日米金融政策を「総括」し、為替などを展望する
日銀は大胆に転向
今月は、日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)が同じ日(20、21日)に開かれました。それらの結果は、今後の金融政策や為替相場を考える上で、極めて重要な意味を含んでいます。
まず日銀は、「総括的な検証」において、インフレ目標の未達やマイナス金利の弊害を、日銀としてはかなり素直に認めました。そして中心的な政策手段に関し、マネタリーベース(日銀が供給する通貨)という量の拡大からイールドカーブという金利体系の操作へ変えました。「大胆な転向」と言うべきです。
すなわち、異次元緩和を支えていた「理論」を、事実上、自ら否定したのです。マネタリーベースの拡大がインフレ率の上昇につながる(なぜそうなるのかは不明)という、「リフレ派の信仰」のことです。
米FRBは堅実に判断
一方FOMCの結果は、重要とはいえ、やや地味かもしれません。米連邦準備制度理事会(FRB)は今回、多くの人の予想どおり、政策を据え置いたからです(利上げ見送り)。この判断は、堅実でしょう。
というのも、「雇用の最大化」および「物価の安定」という使命に照らせば、いま利上げを行う根拠が弱いからです。政策目的がわかりにくくなっている日銀とは違って、FRBは本来の使命に忠実です。
一見、失業率は改善しました。しかし、イエレンFRB議長も言うように、パートタイマーなど低賃金の職が増えているのが実状です。この傾向は「生産性(付加価値を生む効率)」の低下とともに、日米共通です。それらを背景に、物価の伸びはFRBの目標(2%)を下回ったまま勢いがありません。
米国の利上げの行方
それでも大統領選を終えた12月には、利上げに踏み切ることが5割以上の確率で見込まれます。ただ、米景気には個人消費の鈍化など不安材料もあり、結局、年内1回も利上げを行えないかもしれません。
FOMC内の意見が集約しにくくなっていることも、利上げの障害となり得ます。実際、FOMCメンバーのうち3名が今回の利上げを主張しました。半面、年内利上げなしを見込む人も3名存在します。
さらに重要なのは、来年以降における政策金利の見通しです。今回のFOMCで、それがほぼ現実的な姿へ下方修正されました。これによると、12月に利上げが行われたとしても来年の利上げは2回以内にとどまりそうです。昨年末時点の翌年見通し(今年4回の利上げ)に比べれば、半減です。
ようやく「金融政策依存」を脱するのか?
日銀の話に戻ると、2年という物価目標の達成期限は今回消滅し、持久戦で臨む覚悟が示されました。そのため、物価目標未達だからといって市場や政治が執拗に追加緩和を迫る理由は、乏しくなりました。
以上より、日米の金融政策をめぐる大騒ぎは、次第に鎮静化していくものと予想され、かつ、望まれます。世界中の人が金融政策の予想合戦に夢中になっても、それこそ「生産性」の低いことだからです。
ただし、「日米金融政策の違いによりドル高・円安」との定番シナリオは、疑わしくなってきます。少なくとも、「ドル円が1年以内に120~130円へ」といった予想は、来年にはほとんど姿を消すでしょう。とはいえ、行き過ぎた円安はほぼ修正済みなので、80~90円といった円高も考えにくいでしょう。
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