日米金融政策を「総括」し、為替などを展望する

2016/09/23

日銀は大胆に転向

今月は、日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)が同じ日(20、21日)に開かれました。それらの結果は、今後の金融政策や為替相場を考える上で、極めて重要な意味を含んでいます。

まず日銀は、「総括的な検証」において、インフレ目標の未達やマイナス金利の弊害を、日銀としてはかなり素直に認めました。そして中心的な政策手段に関し、マネタリーベース(日銀が供給する通貨)という量の拡大からイールドカーブという金利体系の操作へ変えました。「大胆な転向」と言うべきです。

すなわち、異次元緩和を支えていた「理論」を、事実上、自ら否定したのです。マネタリーベースの拡大がインフレ率の上昇につながる(なぜそうなるのかは不明)という、「リフレ派の信仰」のことです。

米FRBは堅実に判断

一方FOMCの結果は、重要とはいえ、やや地味かもしれません。米連邦準備制度理事会(FRB)は今回、多くの人の予想どおり、政策を据え置いたからです(利上げ見送り)。この判断は、堅実でしょう。

というのも、「雇用の最大化」および「物価の安定」という使命に照らせば、いま利上げを行う根拠が弱いからです。政策目的がわかりにくくなっている日銀とは違って、FRBは本来の使命に忠実です。

一見、失業率は改善しました。しかし、イエレンFRB議長も言うように、パートタイマーなど低賃金の職が増えているのが実状です。この傾向は「生産性(付加価値を生む効率)」の低下とともに、日米共通です。それらを背景に、物価の伸びはFRBの目標(2%)を下回ったまま勢いがありません。

米国の利上げの行方

それでも大統領選を終えた12月には、利上げに踏み切ることが5割以上の確率で見込まれます。ただ、米景気には個人消費の鈍化など不安材料もあり、結局、年内1回も利上げを行えないかもしれません。

FOMC内の意見が集約しにくくなっていることも、利上げの障害となり得ます。実際、FOMCメンバーのうち3名が今回の利上げを主張しました。半面、年内利上げなしを見込む人も3名存在します。

さらに重要なのは、来年以降における政策金利の見通しです。今回のFOMCで、それがほぼ現実的な姿へ下方修正されました。これによると、12月に利上げが行われたとしても来年の利上げは2回以内にとどまりそうです。昨年末時点の翌年見通し(今年4回の利上げ)に比べれば、半減です。

ようやく「金融政策依存」を脱するのか?

日銀の話に戻ると、2年という物価目標の達成期限は今回消滅し、持久戦で臨む覚悟が示されました。そのため、物価目標未達だからといって市場や政治が執拗に追加緩和を迫る理由は、乏しくなりました。

以上より、日米の金融政策をめぐる大騒ぎは、次第に鎮静化していくものと予想され、かつ、望まれます。世界中の人が金融政策の予想合戦に夢中になっても、それこそ「生産性」の低いことだからです。

ただし、「日米金融政策の違いによりドル高・円安」との定番シナリオは、疑わしくなってきます。少なくとも、「ドル円が1年以内に120~130円へ」といった予想は、来年にはほとんど姿を消すでしょう。とはいえ、行き過ぎた円安はほぼ修正済みなので、80~90円といった円高も考えにくいでしょう。

 

印刷用PDFはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ