米国の「謎」が深まる中、FRBの信頼性は?
米国の雇用は(一見すると)良好
米国の景気は良いのか悪いのか? これが最近、ますますわかりにくくなっています。
雇用は良いようです。7月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比で25.5万人も増えました。傾向を見るときに重要な3か月の平均も19.0万人増と、好調の目安とされる20万人増に近づきました。
失業率は5%を下回っており、悪くありません。というより、景気が非常に良かった頃(2008年の金融危機前)と同じくらいの水準まで下がっています。肝心の賃金も、平均では緩やかに増えています。
GDPは低調
これに対し、国内総生産(GDP)は冴えません。明らかに、その伸びは低下傾向です。
中でも設備投資が振るわず、3四半期続けて減っています。大統領選挙も関係しているのでしょう。多くの企業は、新しい政権の経済政策が判明してくるまで、大規模な投資を先送りしようとするからです。
消費は好調ですが、この勢いは続かないでしょう。たとえば、自動車販売のブームはピークをすぎつつあるようです。利上げを見込んだ駆け込み需要の一巡や、ガソリン価格の下げ止まりなどが背景です。
米国経済の「謎」
「雇用は良好、GDPは低調」という矛盾は、米国経済をめぐる「謎」と言えなくもありません。
おそらく、将来に関し、皆が自信を持てないのでしょう。よって多くの場合、企業は、設備投資よりもパートタイム職などを増やします。不況になったとき、設備を減らすよりも雇用を減らす方が容易だからです。しかし、そうした雇用が増えても生産性は上がりにくく、そのためGDPはさほど増えません。
賃金増で消費増、そしてGDP増という好循環も、緩慢なものにとどまるでしょう。国際的な「同一労働・同一賃金」へ向かう過程にある以上、新興国に比べると、米国や日本の賃金増は限られるからです。
FRBも信頼を失うのか?
ただ、これらに定説はなく、謎は解けません。よって米連邦準備制度理事会(FRB)は、利上げにかなり慎重です。第一、GDPがこれだけ低調な中で利上げを行うことは、まずありません。
すでに、利上げは相当遅れています。FRBの予想に反し、経済の回復が鈍いからです。インフレ目標の達成が絶望的になった日銀のように、FRBへの信頼性も傷ついてしまうのでしょうか。
おそらく、その心配は小さいでしょう。中央銀行に求められるのは、常に大成功を収めることではなく(それは無理です)、誤算が生じたときの丁寧な説明です。FRBには、それを行う謙虚さがあります。
FRBが市場の安定に貢献
仮にFRBが年内(9月もしくは12月)に利上げを行ったとしても、ひとまずドル高・円安へ振れた後、すぐにドル安・円高へ転じる可能性が高いでしょう。基本的に、市場は予想をもとに動きます。そして年内に利上げを行った場合、これで当分は利上げ打ち止め、との予想が広がると考えられるのです。
欧州や日本が金融緩和策を拡大する中では、米国の利上げの遅れは当然です。今は日銀が金融市場の混乱を招いているものの、FRBの堅実な姿勢のおかげで、市場の危機的な混乱は避けられるでしょう。
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