2016年のアベノミクスと円相場
アベノミクスの総決算
4年目を迎えたアベノミクスは、今年こそ、誰もが納得する実績を見せつける必要があります。
というのは、政権の期間において、もうすぐ現政権は前の民主党政権(3年3か月)を追い越すことになるからです。前政権の経済政策を厳しく批判して登場したのが現政権です。そうである以上、そろそろ前政権をしのぐ圧倒的な実績を示さないと、現政権も厳しい批判を甘んじて受けなければなりません。
3年間のアベノミクスへの評価は様々です。株価が上がればよいのであれば成功でしょう。ただ、2012年後半以降の株高は海外情勢の好転に恵まれた面が大きく、アベノミクスだけのおかげではありません。また、雇用が少し増えたから成功と言う人もいます。しかし、多くの人の実質賃金を抑えることで非正規雇用などを増やす、という形の「雇用回復」を国民は果たして望んでいるのか、疑わしいところです。
アベノミクスは失敗したのか
アベノミクスが成功したか否かは、株価や雇用でなく、当初の目標に照らして判断すべきでしょう。
2013年の年頭所感などを振り返ると、首相は「デフレと円高からの脱却による経済の再生」が喫緊の課題だと述べていました。また同年に発表された成長戦略では、国内総生産(GDP)の成長率(向こう10年間の平均)を実質で2%、名目(実質成長率+インフレ率)で3%、との目標が設けられました。
その後、円高からは脱却し、すでに極端な円安です。これらに伴い食品などは大きく値上がりしました。人々が感じているのはインフレであり、マインド(気持ち)としてはデフレもほぼ脱却したと言えます。
しかし、実質GDP成長率は前政権時に比べむしろ悪化しています。2013年は公共投資の大盤振る舞いで若干回復したものの、2014年はマイナス成長に沈みました。2015年は0%台のプラスが見込まれるとはいえ、実質2%という目標の半分以下です。そして、この目標はいつしか聞かれなくなりました。
つまりアベノミクスは、「デフレと円高からの脱却」では成功したと言えます。問題は、それが「経済の再生」につながらなかったということです。この点では失敗だったと認めるのが誠実な態度でしょう。
円安は国益を損なう
結局、「デフレと円高」は「経済の低迷」の原因ではなかったのです(普通に考えればわかることですが)。逆に、行きすぎた円安は日本の国益を損なうことが、ようやく多くの人に理解されつつあります。
実際、円安に伴って、日本の経済規模であるGDPは米ドル換算で大きく減りました。一人あたりGDPの順位低下も深刻です。これを、為替次第で変わる意味のない数字、と強弁するのは誤りです。
なぜなら、地球上に存在する天然資源や食料は有限である以上、GDP(=支出規模)でみた相対的な地位凋落は、資源などの「取り分」が減るのを意味するからです。当然、GDPは同じ通貨(一般に、国際取引で最も使われる米ドル)に揃えて比較されます。
したがって今年のアベノミクスには、円安が経済を再生させる、という思い込みを捨てることが求められます。
これは大きな転向です。しかし、全く不可能とは言えません。従来の主張にこだわらず、国内外の情勢次第で方針を変える「柔軟性」こそ、現政権の真骨頂だからです。
最近それを如実に示したのが、歴史認識における韓国への譲歩です。円安は善、との前提に立つアベノミクスについても、「柔軟な変身」を期待してよいでしょう。そう考えると今年は、円高が進む可能性を否定できないのです。
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