リセッション迫る?:岐路に立つ米国経済
リセッションの定義
米国は今、重要な局面にあります。 景気拡大が続くのか、それともリセッション(景気後退)が現実味を増すのか、の岐路に立っているのです。それをめぐる不確実性で、米国株なども不安定になっています。
なお米国のリセッションとは、通常、実質国内総生産(GDP)が2四半期以上連続で前期比減となった局面を指します。ただ、そうした形式的な定義よりも重要なのは、GDPのほか雇用、所得、小売販売額などを総合的に考慮した実質的な定義です。要するに、全般的・持続的な景気悪化がリセッションです。
予想に反しGDP減
米国のリセッション入りは早くても来年、というのが、市場参加者の中心的な予想です。ところが今年1-3月期の米GDPは前期比年率1.4%減と、前期の同6.9%増から急失速しマイナス成長に陥りました。
しかし内容(図表1)は、決して悪くありません。米経済で最大ウエイトを占める個人消費のGDPに対する寄与度は、1-3月期に1.83ポイントと、前期の1.76ポイントを上回ったのです。また、生産性を高める上で重要な固定資産投資の寄与度は1.27ポイントと、前期の0.50ポイントを大きく上回りました。
輸入および在庫投資
にもかかわらずマイナス成長に陥ったのは、輸出減・輸入増(=純輸出減)、および民間在庫投資の減速が主要因です。それらは必ずしも米国の景気悪化を意味せず、したがって極端な悲観論は誤りでしょう。
純輸出減の一側面である輸入増は、むしろ景気が良いために起こったことです。米国人の消費意欲が旺盛であるので、国内の製品供給では足りず海外の製品を大量に輸入した、ということです。また、在庫投資の減速は、米企業が前期に在庫を積み増した結果、当期は在庫投資を手控えたということにすぎません。
貯蓄減による支出増
とはいえ、米国のリセッションは当面、起こり得ない、とは断言できません。たしかに消費は依然堅調ですが、それは持続的か、を考えねばなりません。消費が不調に転じれば、リセッションが迫るでしょう。
注目すべきは、インフレーション(物価上昇)です。米国では足元、物価が約40年ぶりの高い上昇率を示しています。所得も増えていますが、物価上昇率には及びません(=実質所得の減少)。それでも消費が堅調なのは、多くの人々が、所得のうち貯蓄に回す分を減らし(図表2)、支出を増やしているからです。
物価高の抑制が急務
ただ、実質所得が減少し続ければ、米国人も支出を減らさざるを得なくなります。そうなると小売販売額なども減少し、雇用も悪化しそうです。すなわち、実質的に定義されたリセッションが起こるはずです。
急務なのは、実質所得減の元凶である物価高の抑制です。それが早期に抑制されれば、消費の堅調が続く見込みです。そのため米連邦準備理事会(FRB)は、金融引締めを急いでいるのです(先週には大幅利上げなどを決定)。これらの措置などで物価抑制に成功すれば、深いリセッションは回避されるでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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