政策期待相場はどこまで続くか
今週の国内株式市場ですが、日経平均が節目の16,000円台を回復し、英国国民投票前の水準への戻り基調を辿っています。想定よりも強い結果となった米雇用統計や、与党勝利に終わった国内参院選といったイベント通過のアク抜け感に加え、最高値を連日で更新している米株市場と国内の経済政策期待がさらに背中を押している格好です。
とりわけ、国内については選挙後に安倍首相が財政出動を柱とした経済政策の取りまとめを早速指示したと報じられたほか、バーナンキ前FRB議長が来日し、黒田日銀総裁や安倍首相と相次いで面談したことで金融政策への思惑も高まっています。バーナンキ氏はかつて、「デフレ克服には、ヘリコプターからお札をばらまけばよい」と発言したことにちなみ、「ヘリコプター・ベン」というあだ名で知られています。
菅官房長官は「いわゆるヘリコプター・マネー政策は検討していない」とコメントしてはいるものの、バーナンキ氏の来日スケジュール参院選直後というタイミングであることから、意図的なものを感じざるを得ない印象です。
経済政策の内容は、現在調整中の臨時国会で提出される第2次補正予算案に盛り込まれる予定で、次回の日銀金融政策決定会合は7月28日~29日の日程です。まずは日銀会合待ちといったところですが、もともと、次回の会合で追加の金融緩和策が決定されるという見方は多かったのですが、ヘリコプター・マネー観測でさらに注目度がアップしたわけです。
ヘリコプター・マネー政策とは、言葉の通り、ヘリコプターから現金をばらまくようなイメージです。政府や中央銀行が国民や企業に直接的にマネーを渡すことで、マネーサプライを大幅に増やそうとする景気対策のことです。日銀が現在行っている量的緩和策もマネーサプライを増やす目的で行われていますが、民間金融機関が保有している国債を市場で買い上げるという仕組みになっています。政府が発行する国債を直接日銀が買い取ることは、法律で禁じられています。
足元は「ヘリコプター・マネー」という言葉が独り歩きし、実際に何がどのように行われるのかは不透明な状況と言えます。ただし、政府が現在取りまとめている財政出動による経済政策は、その資金を確保する必要があるため、資金確保という点と、ヘリコプター・マネーというキーワードの点どうしが少なからず結びつけられているのではと思われます。
いずれにしても、しばらくは政策期待が相場を支えることになりそうですが、ヘリコプター・マネー政策にはハイパーインフレや貨幣の信用度を招いてしまう副作用も懸念されています。
副作用と言えば、日銀が今年1月末の会合で導入したマイナス金利もメリット、デメリットが議論されています。実際にマイナス金利(マイナス0.1%)が適応されているのは日銀当座預金内にある一部の超過準備預金のみなのですが、あらゆる日本国債の利回りを大幅に低下させ、7月6日の債券市場では20年国債の利回りまでもが史上初のマイナスとなりました。つまり、想定以上に政策が「効き過ぎてしまっている」可能性があります。
そのため、実際に次回の日銀会合で追加緩和が実施されても、「諸手を挙げて歓迎」とはならない可能性もあり、政策期待相場の逃げ足は意外と速いかもしれません。
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