「株価上昇の勢いと賞味期限」
今週の株式市場の状況を見渡すと、国内では日経平均が39,000円台に位置しながらも、日足チャート上では小さな「窓空け」を伴いつつ、株価の上げ下げを繰り返しており、方向感に欠ける展開となっています。4万台を射程圏内に捉えてはいますが、なかなかトライしきれない格好です。
また、先日の金融面での経済政策を受けて急上昇していた中国株市場ですが、国慶節の休場明けで今週から取引が再開した上海株市場では、8日(火)の上海総合指数が上昇したものの、ローソク足の形が大きな陰線(終値が始値よりも安い線)だったほか、翌9日(水)には下落に転じており、同指数の連騰記録は10日間でストップするなど、「金融政策のインパクト」はひとまず、一服した格好です。
ただし、中国では、「近いうちに大規模な財政面での政策が打ち出されるのでは?」といった見方もあります。実際に、今週末の12日(土)には、中国財政省が財政刺激策について説明する予定となっており、その内容次第では来週明けの中国株市場が再び上昇基調に戻せるのかどうかの分岐点になりそうです。中国財政省はすでに、今年中に約2兆元の特別国債の発行を発表していますが、具体的にその調達資金をどのように使うのかが焦点になります。
その一方で、堅調さが目立っているのが米国株市場です。NYダウとS&P500が最高値圏での推移が続き、9日(水)の取引では最高値を更新する動きとなっているほか、NASDAQも7月につけた高値にはまだ遠いものの、節目の18,000p台を回復し、終値ベースでの9月26日の直近高値を超えてきています。
先週末に公表された9月分の米雇用統計の強い結果を受けて、米経済の「ソフトランディング」シナリオに自信を深めつつあることが株式市場に反映されている格好と思われます。今週に入り、米金融大手のゴールドマン・サックスは、米国における今後1年間の景気後退に陥る確率を20%から15%に引き下げたほか、2024年末のS&P500の見通しを5,600pから6,000pに引き上げています。9日(水)時点のS&P500の終値が5,792pでしたので、年内にあと200p(3.5%)程度の上昇を見込んでいることになります。
とはいえ、米国の株高と同時に、米10年債利回りも4%台まで上昇しています。一般的なセオリーでは、金利の上昇は株価にとって重石となりますが、それでも米国株市場が強いのは先程も述べたように米景気のソフトランディングに対する自信の裏返しとも言えます。
9月の米FOMC(連邦公開市場委員会)では0.5%の利下げが決定され、今後も利下げが実施される見通しとなっていますが、「ここから1~2年は利下げサイクルに入ることで、ソフトランディングに成功し、その後は景気拡大に伴って長期的な金利は上昇していく」というリクツであれば、足元の10年物の金利が上昇したとしてもおかしくはありません。見方を変えれば、米国株市場は利下げ期待と景気の堅調さの「いいとこ取り」をしている面があると言えます。
ただし、同じ金利上昇であっても、ソフトランディングの自信のあらわれなのか、それともインフレ再燃警戒なのか、そして、間もなく米大統領選挙が控えていますが、財政悪化に対する不安の火種なのか、今後の受け止め方が変化する可能性があります。そのため、足元の株高地合いは意外と不安定かもしれず、目先の株高基調の勢いと賞味期限については、経済指標や企業業績のデータとにらめっこしながら上値を追っていくことになりそうです。
銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。
商号等:楽天証券株式会社/金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号、商品先物取引業者
加入協会:
日本証券業協会
一般社団法人金融先物取引業協会
日本商品先物取引協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
一般社団法人日本投資顧問業協会