「米エヌビディア決算と日本株の上値余地」

2024/05/24

今週の株式市場ですが、日経平均は週初の20日(月)に節目の39,000円台を回復させたものの、これまでのところ、上値が伸ばせていない展開が続いています。

もちろん、日経平均の値動き自体は右肩上がりの75日移動平均線に沿って推移しており、着実な復調傾向が続いていますが、足元で主要株価指数(NYダウ、S&P500、NASDAQ)が揃って最高値を更新してきた米国株市場と比べると、株価の戻りに物足りなさも感じられます。

そんな中で、米半導体企業のエヌビディアが22日(水)に決算を発表しました。市場が注目したその中身ですが、「売上高」と「純利益」、そして「業績見通し」のすべてが市場予想を上回る強い結果となったことで、決算後の同社株は時間外取引で大きく上昇し、節目の1,000ドル台に乗せる場面も見せました。

これを受けた日本株市場でも、レーザーテックやディスコ、東京エレクトロン、アドバンテスト、ルネサスエレクトロニクスといった半導体関連株を中心に株価が上昇しています。今後についても、直近で上値の重たさが感じられた日本株全体の上昇につなげて行けるかが目先の焦点になりそうです。前回のエヌビディア決算の時も、同社の好決算を受けた日経平均が大きく上昇し、その後の4万円台乗せまで上値を伸ばす原動力となりました。

実は、エヌビディア決算発表前の日経平均の終値をチェックすると、前回(2月21日)が38,262円、今回(5月22日)が38,617円と株価水準はあまり変わらず、今回も前回と同じような値動きを辿るのであれば、日経平均が再び4万円台に乗せる展開もあり得そうです。ただし、そこから先の上値については注意が必要かもしれません。

その理由のひとつは、エヌビディアの強さです。エヌビディアの好決算は、生成AI開発・投資ブームを背景とする半導体需要の高さを見せつけるものであり、確かに、同社株の上昇は、他の半導体関連銘柄へ波及していく効果があります。とはいえ、同社の強さは、高性能のGPUと同時に、それを動かすソフトウエア基盤(「CUDA(クーダ)」)もセットで提供することで顧客を囲い込んで競争優位に立っていることにあります。つまり、これまでのような半導体関連銘柄の全てが揃って上昇して行くのではなく、今後は製造装置や検査装置、素材といったものを提供している銘柄への選別が進んでいくと思われ、この観点で見れば、半導体製造の裏方企業が多い日本株にとしては有利と言えます。

とはいえ、日本株全体で見れば、日米の金融政策の方向性の違い(緩和を向いている米FRBと、引き締めを見据えている日銀)をはじめ、すでに日本株は割安感と出遅れ感が修正され、今後は企業の成長性が問われる中で迎えた直近の企業決算シーズンがその期待に応えきれなかったこと、そして、日本株上昇の追い風となっていた、「海外勢による中国から日本への資金シフト」についても、日本株の上昇に一巡感が出始める中、景気悪化の底打ちを示す経済指標が増えてきた中国市場へ資金の一部が巻き戻されている可能性など、上値を重たくさせる材料が増えてきています。

数少ない一部の銘柄に支えられた株価上昇は相場に不安定さをもたらします。したがって、しばらくの間は、日本株全体の温度感を探るために、値がさハイテク株の影響を受けやすい日経平均と同時に、大型主力バリュー株の動向が反映されるTOPIXの動きも併せて見て行く必要がありそうです。

楽天証券株式会社
楽天証券経済研究所 土信田 雅之が、マクロの視点で国内外の市況を解説。着目すべきチャートの動きや経済イベントなど、さまざまな観点からマーケットを分析いたします。
本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。
銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。

商号等:楽天証券株式会社/金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号、商品先物取引業者
加入協会:
  日本証券業協会
  一般社団法人金融先物取引業協会
  日本商品先物取引協会
  一般社団法人第二種金融商品取引業協会
  一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ