足りないのは「底打ち感」か「先高観」か?

2022/10/14

アフター米雇用統計と国内連休明けで迎えた今週の株式市場ですが、これまでのところ、日経平均は先週末より株価水準を切り下げる展開となっています。

先週の日経平均は26,000円台割れから27,000円台乗せへと1,000円以上も一気に駆け上がったわけですが、その上げ幅の殆どが週初の3日(月)と4日(火)の2営業日でもたらされました。しかも、チャートのローソク足を見ると、両日のあいだには400円以上の「窓」が空いています。

一般的に、チャート上に現れる「窓」は、空けた方向に相場が加速しやすい反面、そうならなかった場合には、株価が「窓」を埋めに行くとされています。現時点での日経平均は後者に該当するような動きです。

日米の株価指数の動きを比較すると、日経平均は3月9日の取引時間中につけた安値(24,681円)を底に、以降は26,000円台割れのところで下げ止まるという展開が続き、概ね26,000円から28,000円台のあいだで急騰と急落を繰り返す相場が続いています。一方の米NYダウについても、上げ下げの激しい展開となっていますが、こちらは日経平均とは異なり、時間が経つごとに年初来安値を更新しており、下落トレンドが継続しています。しかも、株価の振れ幅も次第に大きくなっています。直近でもNYダウは9月30日に年初来安値を更新しています。

年間の相場も残りわずかとなり、年末の株高傾向が意識されるタイミングとなりますが、この直近につけたNYダウの安値が今年の大底となるのかが注目されます。そのため、先週に見せた株価反発について整理する必要があります。

先週の株高をもたらしたのは、足元で大きく株価が下落していたことによる短期的な反動をはじめ、米金融政策のタカ派姿勢が強まる中で、経済指標の中に冴えないものが散見されていることや、オーストラリア中銀が先週に利上げを行った利上げ幅が縮小していたことによる思惑が米国にも波及したことなどが挙げられます。ただし、これらは株価が大底を打ち、本格的に株価の戻り基調を描いていくにはまだ力不足の印象です。

確かに、相場の底値圏では景況感の悪化が金融政策の方針転換への観測を呼び込み、株価が上昇していく展開は珍しくありません。ただし、そもそもインフレが収束に向かわなければ、景況感が悪化しても金融引き締めを続けざるを得ませんので、現時点で株価の先高観に自信を持つのは難しいと言えます。それゆえに米CPI(消費者物価指数)などのインフレ指標の動向が相場の行方を左右します。

さらに、日米で企業決算シーズンが本格化しますが、業績見通しの下方修正が増えてしまうと、PERなどの株価指標面での割安感も薄れてしまうため、もう一段階の株価下落シナリオも燻っています。

そのため、足元の相場は「底打ち感」にしても「先高観」にしても、まだ十分とは言えず、インフレの動向と景況感のバランスでムードが変化する状況がしばらく続きそうです。

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