米中関税引き下げ合意で市場はリスクオン~今後の焦点について
米中関税引き下げ合意で市場はリスクオン~今後の焦点について
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- 米中両国はスイスで貿易協議を行い、互いに課している追加関税を115%引き下げることで合意。
- 大幅な関税引き下げの合意はサプライズ、米金融市場では株価と長期金利が上昇し米ドル高に。
- 依然トランプ関税は多く残り米経済は悪化か、ただ関税修正や利下げの期待が株価の下支えに。
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米中両国はスイスで貿易協議を行い、互いに課している追加関税を115%引き下げることで合意
米国と中国は、5月10日と11日にスイスで貿易協議を行い、互いに課している追加関税を引き下げることで合意したと12日に発表しました。米国は中国に対し、違法薬物対策として20%、相互関税として125%(基本税率10%と上乗せ税率115%)、累計145%の追加関税を課していますが、14日までに相互関税の上乗せ税率115%のうち、当初の24%を90日間停止し、残りの91%を撤廃します。
一方、中国は米国に対し、125%の報復関税を課していますが、同じく14日までに、このうちの24%を90日間停止して10%を維持、残りの91%を撤廃します。なお、中国は別途米国に対し、液化天然ガス(LNG)や石炭、大豆やとうもろこしなどに最大15%の追加関税を課していますが、これは維持されます。この結果、米国、中国ともに関税の引き下げ幅は115%となります。
大幅な関税引き下げの合意はサプライズ、米金融市場では株価と長期金利が上昇し米ドル高に
弊社は中国政府の考え方として、対中関税の145%から54%への引き下げが交渉の出発点とみていたため、初回の協議で米国が対中関税を30%(違法薬物対策20%、相互関税の基本税率10%)に引き下げたことはサプライズとなりました。ただ、相互関税の上乗せ税率24%は90日間の停止という扱いのため、この分をあわせると関税は54%となり、事前の想定は妥当なものと判断しています。
5月12日の米金融市場では、米中の関税引き下げ合意を受け、リスクオン(選好)の反応がみられ、ダウ工業株30種平均は前週末比2.8%上昇、S&P500種株価指数は同3.3%上昇、ナスダック総合株価指数は同4.3%上昇しました(図表1)。また、米国債の利回りが軒並み上昇し、米ドルは対主要通貨でほぼ全面高の展開となり、ドル円はドル高・円安が進行し、一時1ドル=148円64銭水準をつけています。
依然トランプ関税は多く残り米経済は悪化か、ただ関税修正や利下げの期待が株価の下支えに
今後の焦点は、引き続き米国と主要貿易相手国との関税協議の行方です。トランプ米大統領は5月12日、中国の習近平国家主席と週末に電話会談する旨の発言をしており、日本も5月中旬以降の3回目の閣僚協議に向け日程の調整を進めているところです。主要国の株価指数がこのところ大幅に上昇していることを踏まえると(図表2)、一定程度の関税協議進展の織り込みが進んでいるものと推測されます。
ただ、依然としてトランプ関税の多くは残っており、今後、米国経済にどのような影響が出てくるか、消費や雇用などのハードデータも注目されます。実際にハードデータで景気の悪化が確認されれば、株式市場にはネガティブな材料となりますが、その場合は、トランプ米政権による柔軟な関税の修正や、米金融当局による利下げへの期待が高まり、株価の下値が支えられることも考えられます。
(2025年5月13日)
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