気を付けたい「株高の宴(うたげ)」後の展開

2022/08/19

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ、先週からの流れを引き継ぎ、上値をトライする展開が続いています。17日(水)の取引では2万9,000円台に乗せ、今年の高値である1月5日の2万9,388円も射程圏内に捉えつつあります。

こうした株高の背景には、米国株市場が、「インフレのピークアウト感」と「限定的な景気減速観測」という楽観を背景に上昇基調を強めていることが挙げられます。実際に、米NYダウの動きを辿ると、6月17日の安値を起点に、FOMC(連邦公開市場委員会)や各種経済指標、企業業績などのイベントをこなしつつ、40営業日あまりのあいだに、3万ドル割れから3万4,000ドル台乗せまで一気に株価が駆け上がっています。

とりわけ、今週は米ウォルマートなどの小売大手企業の決算を好感する動きや、「足元の株高基調の勢いに乗り遅れたくない」という意識も働き、株価上昇に弾みをつけた面もあります。こうしてみると、時間の経過とともに、「このままインフレの減速が続けば、FRB(米連邦準備制度理事会)による金融引き締めペースが緩和され、景気への影響も心配するほどではないのかも」という見方に対して自信を深めているようにも見えます。

ただし、相場の地合い自体は、経済指標や企業業績の動向次第でムードが変化しやすい状況であることに変わりはなく、足元の株式市場が楽観的すぎる印象があるのも否めません。

一般的に、相場には「業績相場」、「逆金融相場」、「逆業績相場」、「金融相場」の4つの局面がぐるぐる回るサイクルがあると言われていますが、足元の状況は、インフレに対処するために金融政策を引き締めている「逆金融相場」に位置しています。そして、景況感の悪化や企業業績の後退といった「逆業績相場」入りを警戒しつつ、インフレ動向や経済指標、企業決算、金融政策への思惑などの材料に反応しながら株価が推移している段階といえます。

ただし、金融政策の思惑については、足元で高まっている引き締め鈍化観測から、さらにその先にある緩和への転換を期待する動きも一部で見られており、「逆業績相場」の先にある「金融相場」を先取りしている面もあるわけです。

結果的に、こうした楽観的な見通しが正しい可能性は十分にありますが、現時点ではまだ分からないというのが正直なところだと思われます。当然ながらインフレが思ったよりも落ち着いてくれないとか、景況感が想定よりも悪化してしまったなどの材料が出てきた場合には、「逆業績相場」の織り込みが足りなかったことになり、株式市場は再び大きく下落するシナリオも残されています。

先程のウォルマート決算についても、先日の段階ですでに業績見通しの下方修正を発表しており、決算の結果は、冷静に考えれば積極的な買い材料というよりは、「思ったよりも悪くなかった」という程度の材料です。また、今週あたまに発表された中国の7月の各種経済指標が中国経済の悪化を示唆する結果だったりと、懸念材料が燻っている割には、足元の市場はこれらの材料をあまり意識していないようにも見えます。

昨年の秋あたりからの株価の値動きについても、「急騰後に急落」というパターンが繰り返されていますので、楽観の前提条件が揺らいだ時に株価が下がり始めることが想定されるため、注意すべきなのは「株高の宴」が終焉した時と言えそうです。

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