「第1段階」合意後の米中関係は視界不良
連休明けとなった今週の国内株市場ですが、14日(火)の取引で日経平均は終値ベースで昨年12月17日以来の24,000円台を回復してきました。年初に高まった中東情勢の懸念が一服したことや、米中「第1段階」合意の署名がカウントダウンの最中にあるタイミングで、米国が中国を「為替操作国」の指定から外したこと、米企業の決算を好感する動きなどが背中を押した格好です。
今後の米中関係については、現時点で報じられている限りでは、中国側が今後2年間で米国からの輸入額を2,000憶ドルに増やすことをメインに組み立てられているようです。また、これに伴い、米国側はいわゆる対中制裁関税「第4弾」のうち、9月実施分の税率を2月に引き下げる予定です。
2018年の輸入額が約1,200憶ドルですので、米国からの輸入を倍増させるような規模感です。景気が減速している現在の中国にとって、ややハードルが高い可能性がありますし、残りの制裁関税については、今回の合意事項の履行状況を見て検討されることになっているほか、第2段階以降の合意は11月の米大統領選挙後とも一部で報じられており、加速度的な米中関係の改善期待は高まりにくくなっていると言えます。
結局は、現在の中国経済の重石となっている制裁関税第1~3弾は維持されるため、中国経済の急回復は見込めないと判断するのが自然です。中国は新年早々に預金準備率を引き下げましたが、これまでにも中国は米中関係の悪化に対応する形で次々と景気対策を打ち出してきました。
金融政策だけでなく、外資企業への市場開放や失業対策など、その対策は多岐に亘っていますが、実際の中国経済は底打ちの兆しは見えても、本格回復の道筋はまだ見えていません。また、昨年12月10~12日にかけて開催された「中央経済工作会議」では今後の景気下支え策の方針や2020年のGDP成長率目標などが話し合われた模様です。実際のGDP成長率目標は3月の全人代(全国人民代表大会)で公表される予定です。
そもそも、今回の第1段階の合意は「ひとまず休戦」の意味合いが強いと考えることができます。大統領選挙を控える中でウクライナ疑惑を抱えるトランプ米大統領と、香港問題だけでなく、ウイグルや台湾との関係、景気減速に伴う求心力低下を警戒する中国の習近平主席の両者の思惑が一致したため、多少の無理をしても合意を形にしたという構図です。
米中交渉における今後のテーマのひとつである中国企業への規制緩和についても、例えば、華為技術(ファーウェイ)に対する米国の取引規制の背景にあるのは、「抜け道を作ってイランと取引した」、「北朝鮮の通信網整備に関わった」など、知的財産権の保護だけでなく、安全保障などの面が関わっていますので、「第1段階」合意後の米中関係はまだまだ視界不良と見た方が良いのかもしれません。
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