MSCI新興国株価指数」の中国A株組み入れ比率引き上げ

2019/11/29

今週の国内株市場ですが、日経平均は先週末に見せた反発の流れが継続し、取引時間中の年初来高値を更新するなど株価の戻り基調が強い印象になっています。とはいえ1112日以降、終値ベースでの23,500円台には27日(水)時点でまだ乗せきれていません。

 

足元の株価上昇には米中協議に対する楽観をはじめ、国内外製造業の業績後退の底打ち・回復期待が高まっていることに加え、各国中央銀行の緩和姿勢もしばらく続くとの見方による「合わせ技」が背景にあります。米国株市場に目を向けても主要3指数(NYダウ・S&P500NASDAQ総合)が揃って史上最高値を更新しています。

 

ただし、米中関係のもう一方の主人公である中国の株式市場に目を向けると、上海総合指数はあまり上がっていません。チャートで中期的な株価の推移を見ても、上値が今年4月につけた高値(取引時間ベースで3,288p)以降は戻り高値が切り下がる格好になっています。香港ハンセン指数も同様の動きです。

 

もともとは、今年の中国株市場は需給的に上昇していく見方が主流でした。具体的にはインデックス型運用などを行う機関投資家がベンチマークとして利用している「MSCI新興国株価指数」において、中国A株の組み入れ比率が2019年に3回にわたって段階的に引き上げられるというのが理由です。すでに5月と8月に引き上げ行われ、3回目の引き上げが実は今週27日に行われています。これにより同株価指数における中国A株の組み入れ比率は昨年の0.7%から4.1%に高まりました。

 

それが、いわゆる「逃亡犯条例」の改正を巡る抗議からはじまった香港のデモが、時が経つにつれて「一国二制度」の維持や自由・民主的な統治への要求へと拡大し、現在も収束できていない情勢になってしまったことが需給による強気の見通しを覆い隠してしまった格好になっています。

 

本来、このMSCI新興国株価指数における中国A株のあるべき組み入れ比率は20%を超えています。それが中国のビジネス環境の整備の遅れや知的財産権の保護への懸念、国際通商ルールの適用が進んでいない等のリスクが考慮されて組み入れ比率が抑えられてしまっているというわけですが、これらの要因は米中協議の論点とも重なります。

 

つまり、今後の米中協議の進展次第では、MSCI新興国株価指数における中国A株の組み入れ比率も上昇し、海外からの資金流入も期待されることにもつながって行くことになるわけです。

 

 

 

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