陽性の下落がもたらした買いチャンス
【ストラテジーブレティン(218号)】
(1) 昨年末の株価急落は想定通りもっぱらテクニカル要因、陽性の下落
多くの需給、バリュエーション指標が大底シグナル
問)武者リサーチは昨年一貫して、株価暴落を正当化するファンダメンタルズ面での悪化は起きていない。株価暴落は需給、テクニカルなどの市場内部要因によるものである、と主張してきました。この考えに変化はありませんか。
武者)変化はない。昨年12月26日クリスマス暴落直後のストラテジーブレティン216号「株式暴落の正体」で、今回の暴落はもっぱら市場内部要因によるもので、一日に23%も暴落したブラックマンデーと類似している、と主張した。実際クリスマス暴落の大底までに高値から20%下落したNYダウは、その後3週間で3000ドル上昇し、下落幅の半分を取り戻した。テクニカルに売られたものはテクニカルに買い戻される、その買い戻し局面に入っていると考えられる。
12月の暴落はまさしくリーマンショック級の下落であった。図表1は米国株式投信、ETFへの純資金流出入額(月次)であるが、2018年12月はリーマンショック時を大きく上回る755億ドルという過去最大の資金流出が起きた。一時的に投資家が恐怖に凍えて全く買いの手が出なくなるという異常空間が現出したのである。それはリーマン級の大不況が来ないとすれば、極端な過剰反応であり、空前の買いチャンス到来とも言えるものである。図表2は日経平均株価とPBR推移であるが、2018年12月末は、PBR1倍以下と、かつてリーマンショック時とアベノミクススタート直前しかない歴史的低水準に落ち込んだ。さらに図表3の東証裁定買い残高は5000億円台と歴史的低水準まで低下した。それは外国人主体の投機家による先物売りが過去最低水準まで低下したことを示している。裁定買い残5000億円ラインを付けたのは、過去2003年3月、2009年1月、2016年6月しかなく、いずれも相場大反転のシグナルとなった